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ブルーマ防衛 前編 ~友として~

 
 さて、ちょっと間が開いたので、そろそろマーティンのザルクセスの神秘の書解読が進んでいるだろうと考えて、再びクラウドルーラー神殿へと向かってみた。
 今回持ち帰っているものは、グレート・ウェルキンド・ストーン。ミスカルカンドで入手したものだ。
 
「やっぱり届けるの?」
 

 神殿の前で、緑娘は不満そうにつぶやいてきた。
 相変わらず、俺が帝位簒奪するのを望んでいる困った娘だ。
 
「いい加減マーティンを認めてやれよ。彼なら立派な皇帝になれるって」
「あたしはあなたが皇帝になるほうがよいと思っているわ」
「じゃあこうしよう。今回ちょっと俺はマーティンにカマかけてみるから、その判断を見て決めてもらおうか」
 
 カマをかけるといっても簡単なことだ。
 この国の人間は、どうもなんでもかんでも俺に頼る風潮がある。
 だからマーティンも、結局の所俺に丸投げ、という方法を取ってくるのなら、ついでに皇帝の座も丸投げしてもらおうというものだ。
 これまでも、マーティンの解読中にいろいろなことを代行してきた。鎧探しや石探しなど。そしてこれからもならば――
 そう決めて、神殿へと入っていく。
 
 
 
「畏れながら陛下! 他に方法があるはずです。リスクが大きすぎます!」
「危険は承知だ、私はクヴァッチを見ている。だがしかし、他に方法は無い、やるしかないのだ!」
 
 なにやら修羅場?
 ――というわけではなさそうだが、マーティンとジョフリーがやりあっている。
 何か問題でも発生したのかな?
 

「わかりました。ブレイズはいかなる時も貴方の御心のままに」
「あとはどのようにブルーマの伯爵を説得させるか……」
「それと、彼が殿下の計画をどう思っているか見るとしましょう」
「俺のことですか?」
 
 二人の会話が終わりそうにないので、間に入ってみた。
 

 マーティンは鎧で身を固め、まるでこれから戦地へ赴こうとしているかのごとくだった。
 俺は、グレート・ウェルキンド・ストーンを差し出す。
 
「戻ってきたな。それもグレート・ウェルキンド・ストーンを携えて」
「おや? 取ってくると約束したはずですが?」
「そうだったな。本当に君は頼りになるよ」
「これからも何でも任せて下さい」
 
 これがカマかけの一つ。
 俺はそう言いながら、マーティンに大きな輝く石を差し出した。
 俺の言った「何でも」という言葉の中には、皇帝陛下としての役割も含まれているのだ。
 シロディールも君に任そうなどと言い出すのであれば――
 
「なるほど、グレート・ウェルキンド・ストーンをこの目で見る事ができるとは! 古い言い伝えの通り、美しい……。しかし、この美しさはアイレイドによって作られた全ての物のように、恐ろしい力を隠すためのものだ」
「これで鍵は三つ手に入りましたね」
「そう、必要なアイテムはあと一つだけ。それが揃えば、マンカー・キャモランの作った楽園へと乗り込むことができる」
「それで、最後に必要なアイテムとは何ですか?」
「じきに目にすることだろう」
 
 そうもったいぶって、マーティンは説明を始めた。
 最初の二つの鍵が、デイドラの血とディバインの血という対極する力だったように、最後の鍵も今回取ってきたグレート・ウェルキンド・ストーンの対極にあるものだと言う。
 それは、オブリビオンゲートの動力源である、シジル・ストーンなのだ。
 
「シジル・ストーンなら持っていますよ。いくらでも譲ることができます」
「いや、囮のゲートから取れる小さなものでなく、グレート・ゲートから取れるグレート・シジル・ストーン。それが我々の必要とするものなのだ」
 
 なるほど、そういうことか。
 しかしグレート・ゲートはまだ開いていない。どこに行けば入手できるのであろうか?
 するとマーティンは、壮大な計画を語りだした。
 
「君は反対するだろう。ジョフリーは反対だった。ブルーマの伯爵も、確実に反対するだろう」
 
 そう前置きして語りだした計画とは、結構大それたものだと考えらるものだった。
 先ほど彼が述べたように、グレート・シジル・ストーンはグレート・ゲートを固定するためのエネルギー源だ。
 そしてグレート・ゲートは、深遠の暁教団のブルーマ侵攻の決定打としてこの地に開こうとしている。
 
「つまり、奴らにグレート・ゲートを開かせて、そこから奪ってしまおうと? 無茶なことを考えますね」
「君は反対するだろう、と私は言ったよ」
「別に反対はしないさ。ただ、無茶な計画だなと」
「リスクは承知だ。私はクヴァッチに居た。デイドラの攻城兵器の威力をこの目で見た。だが我々に選択の余地はない。王者のアミュレットを取り戻す唯一の方法は、あえて深遠の暁教団のブルーマ攻撃計画を実行させることなんだ」
「分かりました。陛下――いやまだ殿下か。マーティン殿下はここにいれば安全でしょう。これまでどおり、俺がデイドラと戦って取ってきてあげますよ」
 
 こう言っておけば、たいていの人は「さすが英雄殿は頼りになる」とか持ち上げて丸投げするものだ。
 人によっては最初から頼る気満々だったりする。
 何しろ緑娘に言わせれば、俺程度の人間でもアークメイジに登り詰められる世界なのだ。ちょろい世界だ。
 
「駄目だ。ブルーマ防衛の指揮は私が執るつもりだ。皇帝になるならば、相応の振る舞いをすべき時なのだ。それが今だろう」
 
 あれ? 何か違うぞ?
 この人は困難に自分で立ち向かっていくのか?
 俺に丸投げして、「グレート・シジル・ストーンもよろしく頼む」と言うのではないのか?
 
「危険すぎます! ここはクヴァッチの英雄殿にお任せして!」
「そうですよ、俺が取ってきてあげますよ。マーティン殿下はここで吉報を待っていてください」
 
 ジョフリーも会話に割り込んでくる。
 俺も、マーティンの言動に違和感を感じつつも、あえてもう一言留まらせてみた。
 しかし――
 
「君は私とクヴァッチで初めて出会った時の事を覚えているかい?」
「なかなか信じてくれませんでしたね」
「そんなこともあったな。だが、神々の計画に踊らされるのはご免だ、私はそう言った。神の計画があるのかは、まだ分からない。だが大切なのは、そんな事ではないと悟ったんだ」
「それは何でしょう?」
 
 ちょっと痛いところを突かれている気を抑えながら、俺はマーティンに尋ねてみた。
 その先を聞くのが、ちょっと怖い気がしてならない。
 
「大切なのは、自分自身の行動なのだ。悪に直面した時、正しいと信じることを貫くことなのだ」
 
 がーんw
 
 そうだよな……
 俺は自分の身を守ることばかり考えて、シェオゴラスの言いなりになったり、メファーラにそそのかされて暗殺をしたこともあった。
 ボーダーウォッチやブリーカーズ・ウェイの平和を思うのなら、デイドラの要求など跳ね返すべきなんだ。
 小さな集落すら守れぬ俺に、やはりシロディールは統治する資格はない。
 俺なら、シェオゴラスにシロディールに災害を引き起こせと脅されたら、簡単に屈服してしまうかもしれないのだからな。
 
「だが君はクヴァッチでそれをやってのけた。我々を救ったのは神々でなく、君だったのだ」
「え?」
 
 なんだ?
 マーティンはこんな俺を持ち上げてくれるのか?
 相手が人であろうが邪神であろうが、よく考えずにはいはいと何でも引き受けてしまう俺を?
 
「あの時君は、神々のために行動していたのか? 私にはわからない。けれど、私が行動を起こすときがやってきたのだ」
 
 そうだ、あの時は別に神に依頼されたわけではない。
 強いて挙げるなら、先代皇帝ユリエル・セプティムの依頼とも言える。
 でも俺は嬉しかったね。これからシロディールの皇帝になろうとしている方にここまで感謝されるんなんて。
 自然と、俺はマーティンの前に跪く。この人なら、いやこの人がこの国を統治していくべきだ。俺はこの人にならついていける――
 
「あなたの思うがままにされてください。俺はあなたの命ならば何でも引き受けるでしょう」
 
 しかしマーティンは、俺の肩を両手で掴んで立ち上がらせて言った。
 
「違うのだ、友よ」
「え? 友?」
「私が求めているのは、服従ではなく君の意思なのだ」
「あなたの命ではなく、俺の意思で――?」
「君にやってもらいたいことは、ブルーマの伯爵の説得だ。君なら伯爵を説得できる」
「わかりました、伯爵を説得させて見せましょう」
 
 こうして俺は、ブルーマ伯爵を説得してマーティンの作戦を実行に移すことにした。
 
 

 ブルーマのタロス教会で待っていると言って出発したマーティンの後姿を見つめながら、心の中で思った。
 
 
 ジーク・カイザー・マーティン・セプティム!
 
 
 
「どうだ? 君もわかっただろう?」
 

 後に残された俺達は、輝くグレート・ウェルキンド・ストーンの前で向き合った。
 
「あの人は違う。この国にも、他人に丸投げするような奴だけではなく、あのような志を持った人も居るのだよ」
「………………」
「彼は俺のことを臣下ではなく友と呼んでくれた。俺も友のためなら、全力でそれを応援するつもりだ」
「婚約者のためには動かないの?」
「んん?」
「なんでもないわ。あなたの友ならあたしの友でもあるわ。あなたがそうするのなら、あたしもそうする」
「そうしてくれ、よろしくたのむよ。二人でマーティンを持ち上げていこう」
「わかったわ」
 
 こうして、マーティンの即位に反対していた者が、一人説得されて味方へとついたのだ。
 この調子でブルーマの伯爵も説得できればいいね。
 
 
 続く――
 
 
 
 
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