鮮血の歓声 後編 ~闘技場の準備完了~

 
 スターク島から本土へ戻り、アンヴィルで少し休んでからこれからの話を決めた。
 

 まずリリィさんは、アンヴィルの支部にスターク島の話を持ち込んで、金鉱の管理人とか新たに選出することにした。
 アイレイドのダムとかもあったし、もうちょっとこの地に派遣するギルドメンバーを増やしても良いと思うけどね。
 例えばアリーレさんは、現在ブルーマ防衛のためにそちらへ向かっている。
 ああ、そういえばそんな話もあったな。マーティンの解読が進んでいるか停滞しているか、またクラウドルーラー神殿に顔を出す必要がありそうだ。
 
 ジ=スカール先輩とニラーシャは、そのまま大学の研究所へ直行。
 ポーレから押収した金塊を、一刻も早く安全な場所に保管させなければならない。
 荷車は重たかろうが、先輩は自分の金塊を運ぶためならこんなの苦しくないなどと言っている。
 いや、その金塊は先輩のじゃないからね、ギルドのだからね。
 
 俺は、まずは途中になっていたクヴァッチの仕事を終わらせることにした。
 動物の魂集め、依頼されたものは後はクマだけだ。
 
 

 リリィさんと一旦アンヴィルで別れ、四人で東へと旅を進める。
 そして、クヴァッチの分岐点で先輩達とも別れて、これからちょっとクマ探しをすることにした。
 クマは、街道からちょっと離れた場所、ブルーマ付近やこのアンヴィルやクヴァッチ付近ではよく見かけていた。
 でもブラヴィルとかレヤウィンとか、ああいった南東部ではあまり見かけないのよね。
 湿っぽい場所は嫌いなのかな、と。
 
「それでは先輩、輸送頑張ってくださいね」
「ラムリーザもよくやってくれた。この金塊の山は借りになってしまう。また何かあれば、ジ=スカールはラムリーザのために働くつもりだ」
「そしてまた今度は貸しだと言って金塊をせびるのですね」
「お、物分りが良くなってきたようだな。それではまた」
「山賊に気をつけてな、衛兵とか役に立たないから」
 
 こうしてジ=スカール先輩達と別れて、クヴァッチ方面へと向かっていく。
 運がよければ、その途中でクマが出てくるかもしれないし、出てこなくてもちょっと街道から外れたらこの辺りには割りと居る。
 
 

 ある日街道で、熊さんに出会った。
 花は別に咲いていない街道の道、熊さんに出会った。
 
 熊さんの言うことにゃ、アークメイジよお逃げなさい。
 誰が逃げるか、魂縛だ!
 
「よし、これで熊さんの魂を捕獲した。これで一旦終わりにしよう」
「極道コンビの片割れ、鹿さんの魂はどうするのかしら?」
「鹿が闘技場で出てきてもなぁ……」
 
 熊と鹿がなぜコンビ、しかも極道なのかはわからんが、こうして全ての魂の捕獲が終わった。
 緑娘が言うには、大きな熊と小さな鹿のコンビだと、その凸凹コンビぶりが良いのだって。よくわからんね。
 あとは何故かデイドラの心臓が三つ必要だと言っていたが、それはこれまでのデイドラとの戦いで少し在庫があったのでわざわざ取りに行く必要はない。
 
 こうして、ガーベンから依頼された品物を全て揃えたのだった。
 
 

「ほれ、苦労して集めたぞ。どやどやっ」
「おおっ、なにやらいっぱい入ってますね」
「頼まれた八種類以外に、オーガとかスプリガンとかいろいろ入れておきましたよ」
「さすがアークメイジ。あなたに任せたことは正しかった。う~む、こうしているだけで連中の唸り声が聞こえてくるようだ」
「あ、リッチ入れ忘れた。マウグルエって凄いのが居たけど、まぁあの時は仕方が無いか」
「闘技場が完成したら、またイグナーを向かわせますのでその時はぜひ参加してやってください」
「参加せにゃいかんのか!」
 
 俺的には、別の奴に戦わせて、最終的に帝都のチャンピオンと二冠統一戦でもやらせた方が盛り上がると思うのだがな。
 もっとも俺は、近いうちに引退するけどね。
 アホな熱狂的ファンが多すぎる。奴ら揃って同じ事しか言わねぇ。
 
 
 以上、クヴァッチ闘技場再建に向けた手伝いは終わり。
 あとは先輩の後を追って帝都に戻ってもいいし、クラウドルーラー神殿に顔を出してもいい。
 しかしその前に、ちょっと別の場所へと寄り道をしていくことにした。
 
 
 そこは、スキングラードの教会。
 スタークの鉱山で働いていたウィンストンが、スキングラードの教会で神父になるための勉強をしていると聞いた。
 ちょっとその様子を見ていこうじゃないか。
 

「おおっ、ウィンストンさん居ますね。ローブ姿似合ってますよ、アーケイの神父みたいだけど」
「誰かと思えば英雄殿、スタークではありがとうございました」
「どうだ? 神父、お坊さんの修行は順調かい?」
「ああ、私はナインに人生を捧げることに決めたのです。数年のうちに、スタークに礼拝堂を再建してみせます」
「だよね、現在スタークには礼拝堂はナインだ」
「そう、それは困ったことなんだ。神父もナインだ」
「怪我した時は、オロナインだ」
「――??」
 
 ん、ちょっと外したか。
 ナインはスタークの鉱山や礼拝堂の間で交わされている暗号。
 ウィンストンも頑張って、お坊さんを目指してやれ。
 お坊さんは、クヴァッチでの神父の呼び方だから気にするな。
 
 しかし彼は、鉱山の事も忘れることはないみたいだ。
 なぜなら――
 

 ローブに着替えた後も、つるはしを背負ったままだったりするのだからな。
 まぁお金に困ったら、いつでも金鉱に戻ってきていいからな。
 ポーレの時と違って、かなり待遇もよくなっているから安心して採掘するがよい。
 
 
 
 




 
 
 前の話へ目次に戻る次の話へ

Posted by ラムリーザ