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一人で飲む ~アル中オヤジには塩水を与えよ~

 
 スターク島は、ネコの額のような島だ。
 住んでいる人も、よそ者に警戒するってわけでもなく気さくな連中が多いので、一泊二日しただけですでに顔見知りもちらほら。
 というより、島民揃ってグランド・チャンピオンのファンのような気もしてきたのだ。
 皆が俺を褒め称える。でもひと時の強さなど、何になりましょう!
 

「おや、グラァークメイジ殿、昼間から酒とはテリミアンみたいになりますぞ」
「変な呼び方をするな。そして大きなお世話だ」
 
 こいつはデュピネオン、タマネギヘアーのハイエルフだ。島民の中でも特に馴れ馴れしい。
 なぜ他の島民と比べて馴れ馴れしいのか探ってみたところ、どうやらこいつは島の魔術師らしいのだ。
 それでアークメイジの俺を、人一倍敬愛しているというわけか。
 
「知っていますか、気の毒なハンニア・キナリウスのことを」
「えっと、いつも犬と一緒に居る人だっけ?」
「その通り、流石です。でも彼女の夫テリミアンのアルコール中毒にどう対処していいのか、私にはどうすることもできません。どうしたらよいでしょうか?」
「知らんわ。あと俺がちょっと飲んでいるからと言って、アル中の話すんな」
「ああどうしよう、なんとかしてあげないと、彼らの幸せな生活は崩壊してしまう……」
 
 また痴情のもつれか。
 この島民は、どうも不器用な人が多すぎると見た。これで三度目になるぞ?
 ジャンとモリハザ、ジョヌニとセルヴィア、そしてハンニアとテリミアン。
 大体酒なんて――
 
 俺は立ち上がって、テリミアンの住む家へと向かっていた。
 デュピネオンがすがるような瞳で俺を見つめているからじゃないぞ!
 

「おい、酔っ払い」
「あんたも酒を手に持っているようだが?」
「アル中だと聞いたぞ。あまり人に迷惑かけるな」
「中毒? まさかぁ、わしは単にスリリー兄弟のワインを楽しんでいるだけだぞ」
「うまいものを見るとそのワインが欲しくなるか?」
「もちろんだ」
「ワインを飲むと、うまいものが食いたくなるか?」
「あたりまえだ」
「うまいものを見ると、またワインが欲しくなるか?」
「当然だ」
「ワインを飲むと、またうまいものが食いたくなるか?」
「しつこいぞ」
「人はそれをアルコール中毒と言うのだ」
「そんなことよりも、スリリー兄弟のワインを持ってきたらいくらでも買い取るぞ」
 
 まあ別におっさんがアル中になったところで俺に被害が出るわけでもないからな。
 とりあえず持っていた酒を譲ってやった。ただのハチミツ酒だ、別に惜しくはない。
 
 

 テリミアンと別れた後、今度は奥さんのハンニアに会ってみた。
 
「見て見てこのアクリスース! とっても可愛いでしょう?」
「残念ながら、俺は犬派でも猫派でもない」
「ペットは飼わないのですか?」
「オオサンショウウオとカワウソを飼っている(。-`ω´-)」
「うそばっかし」
 
 緑娘などは、「あたし羊派」など言っているが、そうだろうそうだろう。
 どうでもいい雑談は置いといて、旦那のアル中について聞いてみた。するとハンニアも薄々感じ取っていたようで、表情を暗くしてしまった。
 
 彼女はやがて顔を上げると、ある作戦がありますと言ってきた。
 スリリー兄弟のワインの瓶の中身を塩水で満たしてしまうのだ。
 これをきっかけのメッセージとして、旦那と話し合おうというものだった。
 
 

「とまぁ、どっちにせよスリリー兄弟のワインが必要になったわけだが、どうする?」
「そうねゃ、あたしもおのおっさんだけならアル中だろうがなんだろうが、自己責任で自由にさせてもいいと思うわ」
「じゃあ酒を探してきて、おっさんに売ってやるか」
「最後まで聞いて。そんなことになったら奥さんが悲しむわ。彼女側に付きましょうよ」
「ん、そうするか」
 
 というわけで、早速酒探し。
 俺達が常備しているのはハチミツ酒だから違う。スリリー兄弟のワインを探さなければならない。
 

「これをもらっちゃいましょうよ」
「ダメだ、これはタミカのビンテージワインだ」
「なんでわかるのよ」
「ラベルにそう書いてある」
 
 シロディールにはいくつかの酒がある。
 まずは一番高級なのが、シロディールブランデー。サングインも愛する困った酒だ。
 次に隠滅のワイン。だがこれは、ある種の魔法の品であって、ほとんど流通していない幻の酒だ。
 それからタミカシリーズのワイン。399年と415年のビンテージ、一般流通品の三種類ある。後述するスリリー兄弟シリーズよりちょっと高い。
 そしてスリリー兄弟シリーズのワイン。これも399年物と415年物、一般流通品の三種類ある。今回探してくるのは、これの一般流通品だ。
 あとはビールやエール、ハチミツ酒が安く広まっている。ワインもビンテージ物は高いが、一般流通品はビールとかと同じぐらいの価格なのだ。
 緑娘がハチミツ酒が好きというので、俺も付き合って飲んでいるうちに気に入ってしまった。
 噂に聞けば、シロディールのブルーマよりも更に北、ペイルパスを抜けた先にあるスカイリムという国では、ハチミツ酒が流行っていていろいろな種類があるらしい。
 一度行ってみるのも悪くないかな。
 
 以上、シロディールのお酒講座でした。
 
 さて、必要なスリリー兄弟のワイン通常品だが、この島には酒場がないので売っている場所が無い。
 アンヴィルに戻るしかないかと思われたが、マグニティセント号の船長ジャファンが言うには、キンタイラ二世号の積荷にワインがあったはずだと言うのだ。
 ならば沈没船を探るのも手だね。
 

 キンタイラ二世号は、島の西側に沈んでいた。
 結構近くまで来ていたんだね、あと少しだと思う反面、確かにゴブリンの巣から近い場所に沈没してると納得。
 しかし――
 
「あたし沈没船なんかに行かないからね」
「金塊があるかもしれないぞ」
「あたしあのカジート先輩じゃない」
 

 というわけで、一人で行くこととなった。
 緑娘は、南国の海岸で泳ぐのはいいが、沈没船には興味がないようだ。
 こっちは深海のかがり火という明かりと水中呼吸が付加された指輪を持っているので、海底探検も問題ない。
 

 潜っていくと、キンタイラ二世号の全貌がはっきりとしてきた。
 こういうの見ると、なんだかわくわくしてこないか?
 リヴァイアサンという船だったら、ちょっと遠慮しておくけどね。
 

 甲板にある扉は壊れて開かなかったが、船の側面にぶつかった跡だと思われる大きな穴が開いていたので、そこから内部へと侵入する。
 ここで水死体がジャーンと現れるのが、ホラー作品となるのだ。
 

 深海のかがり火のおかげで、呼吸も問題ないし、周囲も明るい。
 明かりが無ければ、海底に沈んだ船の中など真っ暗だし、松明も使えないからね。
 

 そして船の奥で、スリリー兄弟のワインをたっぷりと手に入れる事ができたのであった。
 ビールとかエールは、今は必要ないので放置しておいた。
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
 さて、あとはこれをハンニアの所に届けて――
 

「待て、ワインの香りがするぞ、プンプンするぞ。後輩が先輩に隠れてワインを楽しむことなど許されないのだ」
「そんなルールがいつの間にできたんですか? 目ざとい――というか、鼻が利くな。さすが先輩」
「ジ=スカールはワインを飲みたがっている」
「残った奴はあげますよ」
 

 とりあえず一本はハンニアに届けて、中身を塩水にしてもらわなければならない。
 ちゃんとした中身が残っていたので、先輩に一本あけてもらった。
 
「結構。これで準備できました。これを夫に届けてください」
「お~ま~か~せ~を~」
 
 メジューサちゃうで。
 

 残った4本は、全部先輩にあげることにした。
 この嬉しそうな先輩の顔を、とくと見よ!
 
 
「ジーク・スリリー!」
「ジーク・スリリー!」
 

 なんか後ろから、連呼が聞こえる。
 ニラーシャも乗り乗りだ、なんだかんだで先輩に合った人なのだと実感。
 将来夫婦で仲良くアル中になるがよい。
 ――といっても、カジートってスクゥーマの中毒に耐性があったりするので、ワインも底なしだったりするのかな。
 
 
 さて、問題のテリミアンだ。
 この塩水でいったい何が変わるのか不明だが、ハンニアの言うとおり塩水の入ったスリリー兄弟のワイン(の瓶)を手渡した。
 待てよ、これって俺が怒られるのではないか?(。-`ω´-)
 

「ぶはっ! なっ、何だこれは!」
「どっ、どうかしましたか?!」
 
 とりあえず、何も知らなかった風を装う。
 ――ってか、どう考えても俺が間違えて塩水入りの瓶を渡した風にしか見えないよな?
 
「……う~む、女房は知っていたのか。あいつがあんたにこれを渡すよう言ったのだろう」
「まぁ、そういうことになりますねぇ」
 
 ネタ晴らし、でもそうでもないと、何故俺が塩水を提供したのだ? という話になって、いろいろと揉めるかもしれない。
 ここは女房に罪を――ってもともとハンニアの作戦だけどね。
 
「そうか……、わしは手に入れられる酒を全て飲みつくしてしまいたいと考えていたのだが、わかったよ、女房と話し合ってみる」
「ほどほどなら良いはずなんだよ、酒は百薬の長とも言われているからね」
「うむ、この塩水で目が覚めた。明日から一日一本に抑えてみる」
「まだ多いと思うがのぉ……(。-`ω´-)」
 
 まぁ女房とよく相談して、身体を大事にしてやってくれ。
 俺がしてあげられるのはここまでだ。
 
「ふぅ、目が覚めてみたら、一つわかった事がある」
「なんでげしょ旦那」
 

 
 
 死ね!!
 酒に溺れて狂い死ね!!
 
 
 
 
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