恋愛中の画家達 ~恋のキューピッド役~

 
「ところでグランド・チャンピオン殿」
「なんだね、熱狂的なファン一味」
 

「ここに居るジョヌニ、元々セルヴィアと共にロマンチックな愛を紡いでいたのに、今では頭が曇ったままで気の毒なのを知っていますか?」
「セ、セルヴィアとは上手くいっている! 愚かな噂など流さないでください!」
 
 最初に島民からいろいろと話を聞いて回った時、そんな話もあったね。
 確かジョヌニとセルヴィアが結婚の危機にあるということ聞いたという話と、デュピネオンなら詳しいという話があった。
 タマネギ頭のハイエルフが、デュピネオン。青い服を着た冴えないインペリアルが、ジョヌニという人だ。
 
 ジョヌニがこの場から立ち去った後、デュピネオンはさらに詳しく語ってくれた。
 かつてジョヌニは、セルヴィアに一輪のツルナスの花を捧げたと言う。そこで、俺にツルナスの花を探してきて欲しいと言うのだ。
 なんでも、今二人の関係が危なくなっているが、かつての思い出を取り戻すことで、事態がよい方向へと向かうのでは? ということだ。
 
 そしてデュピネオンは、カスタメローリア・スタークやアレニオン・エウリウスの二人が、さらによい方法を知っているかもしれないと言ってきた。
 これはまた恋のキューピッド役か。
 ツルナスと言えば、メファーラの好物だから、あまり良い気がしないのだけどね……
 
 

 カスタメローリアはスターク家の者で、スタークの家で会う事ができた。
 彼女の話では、セルヴィアが銀の指輪を失くしたということで、もう一度ジョヌニが銀の指輪を与えたら二人の関係は修復されるというものだった。
 要するに、どこかから銀製の指輪を調達してきて欲しいというわけだ。
 
 いろいろと手助けをしている俺が語るのも何だが、なぜこの人たちはジョヌニとセルヴィアの関係を気にかけているのだろうね。
 
 

 そして次は、アレニオン・エウリウスだ。島のここで本屋をやっているらしい。
 ちなみに、この島にある唯一の店が、この本屋だったりするのだ。
 

 本屋の主人はアマリウス、うろうろしている方がアレニオン。
 兄弟らしく、名前が似ていてめんどくさいね。
 
 アレニオンの話では、セルヴィアはこの本屋で「帝国小史第四部」を探していたようだ。
 しかしこの店では売っていないと言うのだ。つまり、別のどこかで探してくる必要があるということだね。
 
 
 一応セルヴィアにも会っておいたが、彼女も「二人の関係はうまくいっているので干渉しないで!」とのことだった。
 どうも当事者と他の島民との間で、話が食い違っている気がしないでもないのだが……
 
 
 とりあえずここまでの話を整理すると、二人の思い出の品であるツルナス、セルヴィアが失くした銀製の指輪、セルヴィアの探している帝国小史第四部を集めろということらしい。
 これらの品を使って、二人の関係を修復させようという流れだ。
 
 
 しかしこれらの品物は、スターク島には存在しない。
 そこで俺は、一旦本土に戻って品物を調達することにした。
 

 まずはマグニティセント号の船長ジャファンに頼んで、アンヴィルへと向かってもらった。
 
 そして物品探し、ツルナスの花は錬金術の素材としても使われているらしい。
 だから、魔術師ギルドのアンヴィル支部へと向かい、錬金術師に話を聞いてみることにした。
 ひょっとしたら、販売しているかもしれないからね。
 

「ツルナス売ってるかい?」
「おおアークメイジ殿、こんなところへようこそ。ツルナスの花でしたら1Gですよ」
「一つ貰おうか」
 
 錬金術師のフェレン・レラスに売ってもらって、まずはツルナスの花ゲットだぜ。
 ちなみに、ツルナスはナイトシェードやベラドンナとも呼ばれている。この辺り、覚えておくと後々便利だからね。
 とりあえず、魔術師ギルド関連の人は、俺のことを迷い無くアークメイジと呼んでくれるから気持ちがよい。
 
 次は指輪か本。
 本ならギルドに何冊か置いてあるので、その中にあるかもしれないね。
 

 思ったとおり、ギルド三階の個室にある本棚に、帝国小史第四部を発見したのであった。
 
「キャラヒルさん、ギルドにある本を持ち出したらどうなりますか?」
「本の貸し出しは自由になっていますよ」
「ありがとう、20年ぐらい借ります」
 
 とりあえずキャラヒルさんに話を通しておく。
 どうしてもまた必要になれば、帝都にある本屋から買ってくるよ。
 まぁ魔術の研究に、帝国小史が必要になることはないだろうということで、たちまちは困らないだろう。
 
 

 銀製の指輪だけはすぐには見つからなかったので、わざわざ帝都まで戻ってレッド・ダイヤモンド宝石店を頼ることにする。
 

「こんにちは! 銀製の指輪はありますか?」
「銀製のエメラルド指輪なら140Gだぞ」
「上質のダイヤモンドは100G、上質のエメラルドは80G、銀の指輪だけだと60Gですね」
「計算せんでよい。ちなみに銀の指輪は30G、加工の手間賃が30Gだ」
 
 
 こうして、求められた三つの品物を集めることに成功したのであった。
 アンヴィルに戻り、船に乗って再びスターク島へと戻る。
 こんなに簡単に行き来できるのに、キンタイラ二世号はよっぽど運が悪かったのだろうね。
 
 
「ジョヌニ殿!」
「しつこいなぁ、わかっよ認めよう。私達の結婚は完璧じゃなかったよ!」
「そんな不貞腐れるなって。ほら、このツルナスの花を彼女に捧げるところからやり直すんだ」
「そ、それは……、なるほどその手があったか」
「そしてこれが彼女の探している帝国小史第四部だ。君からプレゼントしてあげたらきっと喜ぶよ」
「そ、そうだったのか……」
「そしてこの銀製のエメラルド指輪。最近彼女はこれを失くして困っていたんだ。新しくこれをあげたら喜ぶよ」
「ここまでやってくれるなんて、ありがとう! きっと上手く使って彼女とやりなおしてみせるよ。お礼に120G支払います!」
「指輪が140G、本が1G、ツルナスが1G。142G払ってもらおうかな」
「そりゃあもちろん! ところで君の顔を思い出したよ! 君を見たときからずっとモヤモヤしていたんだ!」
 


 

「くだらないこと言ってねーで、とっとと女の所へ行けってんだよ!」
「ひえぇ! ごめんなさーいっ!」
「何怒ってんのよ、全く」
 
 全くどいつもこいつも……(。-`ω´-)
 そんなにグレイ・プリンスが王者から陥落した戦いが楽しかったか?
 本当の事を述べてやろうか?
 
 
 あの戦いはほとんど八百長だったんだよ!
 
 
 
 

 とまぁ、こうしてジョヌニとセルヴィアは再び一緒にやり直していこうという話になったので、ある。
 
 めでたしめでたし。
 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ