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鮮血の歓声 前編 ~帝都の闘技場を見てみよう~

 
「ういいいいいぃぃぃぃぃーーーーーーっす! どうぉおもイグナーでぇっすううぅぅぅ!!!」
「騒々しいなぁ!」
 
 どんどん挨拶がでっかくなる、クヴァッチの伝令イグナー。
 

「英雄殿がミスカルカンドへ入っていくのを見たので、出てくるまで待っていたぞ!」
「遺跡の中まで入ってくる勇気は無いようだな」
「私は伝令だからなっ! さて、プロキスが何か話があるとのことらしい」
「今回は間が短いな、と思ったが、クヴァッチのすぐ傍だから来るのに時間がかからなかったか」
「私が思うに、おそらくは闘技場の事についてだろう。彼は最近ずっとそれについて何か悩んでいるみたいだったからな」
「そういえば闘技場だけ未完成だったねぇ」
「詳しくは手紙を見てくれ。それじゃあまたのぉーい、やっ!」
 

 プロキスと言えば、建築主任の方だったな。
 どうやら町の再建はほぼ完了していて、残すは闘技場のみのようだね。 
 よし、マーティンのザルクセスの神秘の書解読は時間がかかっているみたいなので、ちょっとクヴァッチへ寄って行きますか。
 
 
 

 これが、クヴァッチの闘技場建設予定地区。
 ここだけは、まだ周囲に柱が立っているだけで何も完成していない。
 それではプロキスの住んでいる家に行って、話を聞いてみよう。
 

「こんにちは、闘技場の建築は始めないのですか?」
「それなのですよ。闘技場には死が蔓延していると私は考えるのです。それは本当に人々にとって必要な物かと、ね」
「ガチやめて、ブックとアングルを駆使してショービジネスにすればいいと思うよ。そしたら死人も出ない。いや、出る場合もあるけど……、ミサワさん……」
「誰やそれ。――うんまぁ、私もそれを考えたのです。そこで、アリナー伯爵と話もしてみました。すると彼は、グレイ・プリンスを倒したグランド・チャンピオンに話を聞けばいいと行ってきたのです」
「分かりました、今回の任務はグランド・チャンピオンを探して来いってことですね」
「そのとおり、頼みましたよ。グランド・チャンピオン殿」
「…………(。-`ω´-)」
 
 これは試されているのか?
 プロキスはマジでボケているのか?
 
「はっはっはっ、あんたがグレイ・プリンスと戦うのを見たよ。オークが倒されると思った者など居なかったのに、あんたはそれを皆に見せつけてやったんだ!」
「プロキス、お前もか……」
「冗談です、アリナー伯爵からの受け売りです。あなたがグランド・チャンピオンだと聞きました。しかし私はまだ闘技場など見たことも無く、その魅力がどういうものなのか理解できていないのです」
「それじゃあ帝都にある闘技場へ、実際に行ってみてその目で確かめたらいいじゃないか」
「わ、私がですか?! う~ん、確かに今ここで考え込んでいるよりは、そうした方がいいのでしょう」
 
 というわけで、成り行きでプロキスを帝都にある闘技場へ連れて行くことになったぞ。
 そういえば最近は闘技場で戦っていないけど、俺が数週間投獄されている間、闘技場はどうなったのかな?
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
「あの、グランド・チャンピオン……、僕、偉大で強いグランド・チャンピオンの事が好きなんだ……」
「あぐ……」
 

 そうだ、ここにはこいつが居たのだった。
 ファンも極度に熱狂的度が過ぎると、身の危険を感じるというものだ。
 こいつは――名前は何だ? こいつは俺に、一枚の紙を無言で差し出してきた。俺の姿が描かれた、ポラマイドのようだ。
 とりあえず俺はアイドル――でもないのだが、手書きのサインを上に書いてあげた。
 
「君がほしいのはこれだけかい?」
 
 こいつはなにも答えずに、笑顔で頷いた。
 
「英雄殿、これは?」
「ちょっと、あたしよりこいつの方がいいの?」
「いや、そんなわけないだろ」
「そんな酷い。僕はグランド・チャンピオンを何よりも愛している。なにかして欲しいことがあるかい? 武器を持とうか? 靴を磨こうか? 肩でも揉んで――」
 

「斬影拳!!」
 
 ………
 

「さあプロキス殿、闘技場はこちらですよ」
「ああ、しかし――」
「ブルー・チームかイエロー・チームに賭けるのです。って、イエローチームは壊滅したのだっけ?」
 
 仕切りなおし、こうしてプロキスを闘技場へと案内することに成功したのであった。
 失敗することってあるのかね?
 
「さあ、ブルー・チームとレッド・チーム、どちらに賭けますか?」
 
 闘技場の受付に行くと、ちょっとした違和感を感じた。
 レッド・チーム?
 
「レッド・チームとは?」
「あなたがイエロー・チームを壊滅させたので、新たなチームが挑戦してきたのですよ。リーダーのオコノギ・レットという奴は結構やりますよ、グランド・チャンピオン殿」
「まわるまわるよ、時代はまわる~ってやつだね。新しいチャンピオンが生まれたら、俺に挑戦してくるわけか」
「で、どちらに賭けますか?」
「じゃあブルーで」
 
 俺は受付で賭けを済ませ、プロキスを観客席へと案内した。
 

 久しぶりに見る光景。プロキスも、初めて見る闘技場でのバトルに、目を輝かせているようだ。
 この戦いはガチかな? ケツ決めしているのかな?
 
「す、素晴らしい。今まで疑念を抱いていたことが信じられない」
「どうです? お気に召しましたか?」
「歓声、雰囲気、興奮……、なんて爽快なんだ!」
 
 どうやらプロキスは、闘技場の魅力に取り付かれたようだね。
 クヴァッチにも闘技場ができたら、いずれは団体対抗戦とかできるかもしれない。
 その時は、帝都のグランド・チャンピオンとして挑んでやりますか。
 今回のことでプロキスは、自分が直々に闘技場建設を担当することを誓ったようだ。
 そして――
 
「あなたには、闘技場の『参加者』の収集を手伝っていただきたいのです」
「は? 参加者? そういうのは募集すればいいのだよ」
「いえ、もっと斬新な方法を、クヴァッチの新たな魔術師ギルド支部長であるガーベン・セレが試したいと言っていました。なにやら計画があるとか――」
 
 そう言い残すと、プロキスは急いでクヴァッチへと戻っていった。
 ガーベン・セレ、そういえばラミナスさんが、新たな支部長を任命したとか言っていたね。
 それはそれでいいけどね。
 
 さて、それでは俺もクヴァッチへ再び――
 
「ラムリーザ! 見つけたぞ!」
「なんやねん」
 

 闘技場を出たところで、突然誰かに捕まってしまった――と思ったら、ジ=スカール先輩だった。
 
「何ですか先輩、そんなに興奮して。スッポン料理でも食べましたか?」
「ラムリーザはうそつきだ。ゲートを閉じたら、金鉱山の株を増やしてくれると言ったのに、何もやってくれない」
「あー、そんな話もあったねー」
「所長のリリィに相談したら、金の島についての噂を語ってくれた。ジ=スカールは、その島へ行ってみたい」
「行ってらっしゃい先輩」
「ラムリーザも来るのだ。そしたら株を増やすのを忘れていた罪は、水に流すことにする」
 
 なんだか俺の知らないところで、勝手に話が進んでいる。
 まあいいか、先輩が静かになるのなら、その島にちょっと立ち寄るぐらい別に構わない。
 だが今は、クヴァッチの闘技場問題が先だ。
 その事を先輩に話すと、それが終わったら大学の研究室に顔を出すことと言ってきた。
 
「また約束を破ると、ジ=スカールはラムリーザとあそこに倒れている熱狂的なファンとがラブラブな関係だということを、帝都の皆に言いふらして回る」
「相変わらずいたずらの才能だけは卓越していますね……(。-`ω´-)」
「ちゃんと来るのだぞ」
「はいはい」
 
 困ったことになったよ……
 

「こら、お前のせいで俺は変な奴にされてしまうんだぞ、この変な奴め!」
「あなたの肘打ちで気絶しちゃったままね」
「肘打ちではない、斬影拳だ。しかしこいつもよく見ればグラアシア人。まったく、この種族はなんでこんなに妙な奴が多いのだ……」
 

「戦士ギルドに居たマグリールって人も、同じ種族だったわね」
「あの人は割りとまともなほう。エルスウェアのコリントに居たガルウェンって奴とか、ミーシャの天敵ぬいぐるみ泥棒もグラアシア人だぞ」
「あいつまたミーシャちゃんに意地悪したら、絶対に許さない」
 

「――って何よこいつ!」
「なんだ? またブラックウッド商会の残党か?」
 

「しつこいわね!」
 

 先日寝こみを襲われたように、またしても何者かが襲い掛かってきた。
 たぶんブラックウッド商会の残党だと思うけど、よっぽど本部を壊滅させられた恨みが膨れ上がっているみたいだな。
 

「一度レヤウィンに行って、ブラックウッド商会の本部を確認しておくべきだな」
「あたしを不意打ちしようだなんて、百年早いのよ」
 
 まあいいか、クヴァッチへ急ごう。
 とりあえず闘技場を完成させて、次は我侭なジ=スカール先輩をなだめて、と。
 マーティンの解読が終われば、そっちも対応しなければならない。
 忙しいね。
 
 
 続く――
 
 
 
 
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©発行年-2020 らむのゲーム日記