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クラウドルーラー神殿にて ~竜の生まれ万歳~

 
 クラウドルーラー神殿にて――
 
 マーティンを守るのであれば、帝都よりも曇王の神殿と呼ばれるクラウドルーラー神殿の方が安全だと聞いた。
 そこで、コロールからはるばる馬で旅をしてきて、ブルーマ北の山腹にある神殿へと辿りついたところだ。
 ここは、ブレイズにとっていにしえの砦、聖域、そして最後の隠れ家なのだそうだ。
 
 そして俺は、ジョフリーやマーティンの演説を聞いてから、立ち去ることにしたのだった。
 
「ブレイズよ、今は暗黒の時だ! 陛下とご子息は、我らの目前で命を奪われた。帝国は危機に瀕しているのだ! しかし希望はまだある。この方はマーティン・セプティム、ユリエル・セプティムの真のご子息だ!」
 
 そして神殿の広間では、ジョフリーのアジ演説が始まった。
 

 なんか盛り上がって参りました!
 しかし、王宮でぬくぬくと育ってきた息子達は関係なくて、クヴァッチの教会で細々と育ってきた者が真の息子か。
 護衛が六人だけというのがちょっと気になるが、少数精鋭ということだろうと信じるぞ。
 
 そして、マーティンの挨拶が始まった。
 
「皆が私の即位を望んでいることは分かっている。もちろん全力をつくすつもりでいるが、私にとっては何もかも初めてのことなんだ」
 
 先生! 一人あなたの即位を望んでいない者が居ます!
 緑娘は、俺が即位することを望んでいます!
 
「演説にも慣れては居ないが、この度の歓迎、大変ありがたく思っていることだけは判ってもらいたい。いつか君たちの忠誠に応えられる日が来るとよいのだが。以上だ、ありがとう!」
 
 先生! 緑娘の陛下に対する忠誠は疑問があります!
 

 最後にもう一度、マーティンを万歳して解散となった。
 よし、今度こそ俺の仕事は終わった。あとはブレイズ次第、お任せじゃ、成り行きじゃ、それが一番。
 
「待ってくれ」
「な、どうした?」
 

 立ち去ろうとする俺を、マーティンが引き止めた。
 もう俺には用は無かろう、後はブレイズが守ってくれるさ。
 まぁブレイズは、ユリエル陛下を守れなかったという前科があるけどな。
 
「大した演説ではなかっただろう? 皆をがっかりさせるものでも無かったと思うが」
「初めてであれは十分じゃないかな。俺も一度は演説してみたいものだけどな」
「ブレイズは私を、マーティン・セプティムとして祭り上げようとしている……」
「そんなものだよ。人は目的があって戦うもの。ブレイズの目的が、あなたなだけですよ」
「君は何のために戦っているのかな?」
「俺は……、何だろう? 個人的な都合で魔術師ギルドを頼って、そしたら勝手にギルドに面倒ごとが舞い込んで、自分の居場所を守る為に戦っていたら、いつの間にかアークメイジになっていたよ」
「そうか、居場所を守るためか」
 
 基本的に人助け。緑娘は俺のことをお人好しと言うが、困っている人を見過ごすほど冷徹にはなりきれない。
 戦士ギルドは何だったっけ? 緑娘が急に戦士ギルドに入ると言い出して、それに付き合っていただけかな?
 マーティンは俺の手を握って、さらに話を続けてきた。
 
「君が居なかったら、私は今頃死んでいただろう、ありがとう」
「いんえー」
「だが、皆は私のあるべき姿に期待している。どう振舞えば良いのだろうか?」
「そうだね、笑顔で手でも振ってあげるか? パレードとかやったらの場合だけど」
「皇帝としての指揮はどうだ? 求められても私には見当もつかない……」
 
 そう言われても、俺も皇帝だった経験が無いので、皇帝としての振る舞いなどわからない。
 アークメイジとしての振る舞いならわかるぞ。私室に篭っていて、時々表に出てきて「本当か? 本当か?」と新入りの報告に驚いていたら良いのだ。
 大学で一番働き者なのは、ラミナスさんだよ。それは間違いない。


 気が付けば、兵士達はそれぞれの持ち場へ戻ったようで、広間には俺とマーティン、そしてジョフリーと緑娘だけになっていた。
 
「そうだねぇ、まだ即位したわけでもないし。まずは当面の問題を解決することに全力を挙げたらどうでしょう?」
「当面の問題……」
「王者のアミュレットだっけ? あれが奪われたのならば、まずはそれを取り戻すことを考えては如何でしょうか?」
「そうだ、王者のアミュレットだ。我々、いや私がアミュレットを最高神の神殿でかざすことで、竜の火を灯すことができる。そうすればオブリビオンの侵攻を阻止できる」
 
 オブリビオンの侵攻か。
 さっき見たよ、すでにゲートは各地で開き始めているようだ。
 俺はブルーマの街にも魔術師ギルドがあるので、そこを守る為にここでの話が終わればすぐに向かうつもりだ。
 
「そしてあなたは皇帝となるでしょう。ジーク・カイザー」
「その呼ばれ方には、慣れない物だな。ともかくまずはアミュレットを取り戻さねば。ジョフリーなら何か手がかりを知っているだろう」
「その調子だ、がんばってくれ」
「ジョフリーなら何か手がかりを知っていると思うのだが……」
 
 マーティンは、すがるような目つきで俺のことじっと見てやがる。
 ん? まさか俺に丸投げ?(。-`ω´-)
 
 うん、まぁ、皇帝らしくなってきたんじゃないかな。
 うまく人を動かす能力、それが上に立つ者には重要なものとなる。
 少なくとも俺に依頼するのは最善と言えるだろう。
 そのことに気づいた点でも、マーティンは人を見る目があると言える。
 それはそれで、よいことだ。
 
 
 
 
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