home > 投稿 > > ジ=スカールとニラーシャ

ジ=スカールとニラーシャ

 
 帝都インペリアルシティの南東部に位置する魔術師大学。アークメイジの居城、いや、城ではない。
 前回大学を訪れたときは、グレイ・カウルを被っていたのでグレイ・フォックスとして逮捕されてしまった。
 しかし今の俺は、アークメイジとして帰還したのだ。
 何も問題ない、問題ないはずだ。はずである。
 

 
「ラムリーザはなぜそんなボロッちい格好をしているのだ?」
 
 俺に一番最初に声をかけてきたのは、元イタズラ小僧のジ=スカール先輩だ。獣族ではなくて、カジートな。獣族でも別にいいけど。
 それならアルゴニアンは、鱗族とでも呼ぶべきか?
 
「そういえば、牢獄に入れられる前に私物を取り上げられて、このボロを着せられたっけ」
「んん? しばらく顔を見せなかったが、ラムリーザは牢屋に入れられていたのか?」
「――違う。山奥に篭って修行をしていたのだ……(。-`ω´-)」
 
 かっこ悪い過去は、黒歴史として抹消するべきなのだ。
 盗賊ギルドに潜入したこともなかった。グレイ・フォックスの後を引き継いだこともなかった。
 クインティリアス隊長ではないが、グレイ・フォックスはただの伝説なのだ。いや、伝説になったのだ。
 
「どこの山奥に行っていたのだ?」
「具体的に言えば、ヴァラスの山奥でんでんかたつむリンゴはまっかっか~ちゃん怒りんぼ~くは泣いちゃっ狸で~べ~掃除はき~ら~家は二階建て~れびからてれびっくりし~た~ようかん甘い~よ~、である」
「ジ=スカールは、ラムリーザの言っていることが、全く理解できない」
「それでよいのだ……(。-`ω´-)」
 
 一応誤魔化したということで、別の話を振って話題転換しておこう。
 先輩と共通の話題と言えば――
 
「ところで、緑娘はここに居ますか?」
「ジ=スカールは、ミドリムスメなどという者を聞いたことが無い」
「あー、ソニアな。一緒にエルスウェアに行った娘だ」
「なるほど、あの妙に派手で、妙に扇情的な娘か。ここにも何度か来たが、今はここには居ない。それよりも、めずらしい人を紹介しよう」
 

 
 誰だろう? 科特隊パリ本部からやってきたアンヌ隊員かな?
 そういって、ジ=スカール先輩は、一人の見習い魔術師を前に出してきた。
 ん、カジートの魔術師。こんな人居たっけ? いや、なんか見覚えがあるような気もするが、やっぱりどうにもカジートの顔は区別が付きにくい。
 
「ニラーシャです。エルスウェアでは婚約者の指輪を届けていただきありがとうございました」
「見習い魔女のニラーシャと言えば、実は魔導師が作り出した人工人間という?」
「それはミランシャだ」
 
 ん、そういえば思い出した。
 

 エルスウェア、オークレストの町に住んでいた、追い剥ぎの婚約者か。しかしなぜここに居るのだ?
 
「ジ=スカールは、ニラーシャと交際することにしたのだ」
「ええーっ?! いつの間に?!」
「いや、ラムリーザが失踪していた期間は、結構長かったのだが?」
「――悪いのは、グレイ・フォックスだよ……(。-`ω´-)」
 
 そんな感じで、俺の居ない間にちょっと動きがあったりする。
 だが、皇帝が暗殺された情報は、さすがにまだ出回っていないらしく、ジ=スカール先輩に浮いた話ができた程度で何も変わっていない。そういえば、オークレストで先輩と別行動していたことがあったっけ? その時から何か始まっていたのかもな。
 しかしアークメイジが居ても居なくても変わらないのか? ――と思ったが、実はそうではないのだ。
 例えば先代アークメイジのハンニバル・トラーベン。いつも自室かその下にある執務室に居ることがほとんどで、表に出てくることはまず無かったらしい。
 確かに大学の構内を歩いているハンニバルを見た記憶は無いね。見習いの中には、ハンニバルに会ったことすら無いという人も居る始末。
 逆に俺は、結構表に出ているので、馴染み深いのだそうだ。
 
 

 まあよい。
 少し休んでから、皇帝陛下直々に賜った極秘任務の遂行をしますか。
 
 ………
 ……
 …
 
 念のために、港湾地区にある自宅も覗いておくか。
 緑娘が居れば、なるべく早く合流しておきたい。皇帝が暗殺されたという事実を知って、一人で勝手に無茶なことを始めないためにも……
 

 
 港湾地区は、盗賊ギルドに縁が深い場所なので、慎重に行動する。
 隣にアーマンドさんの家があるし、通路を挟んで正面には、マィヴリーナやメスレデルの家だ。
 うっかり鉢合わせなどして、しゃどーはいちゅーなどと言われたら、変な噂が立ってしまう。
 変な噂とはどんな噂かだって? 具体的に言えば、こんな感じだ。
 
「ねー、知ってる? あいつ本命とばかりデートして、最近私にかまってくれないのよ」
「あー、そうなのよね。最後にデートしてくれてからどれだけ経ったのかしら」
「幼馴染をこんなに長い間放置しているなんて、非常識よね。ただし一緒に下校はしてあげないけどね」
「あたしもクリスマスパーティで出会って名前聞いただけだけど、マメにデートしてくれないなんて酷いよね」
「なになに、何の話?」
「あの人は根性あると思って教室で声をかけたけど、全然デートしてくれないって話」
「あ、それなら私も早朝ジョギング中偶然出会っただけだけど、一度もデートしてくれてないよ」
「同じ部活だったから自己紹介したのだから、せめて電話ぐらいでも定期的にしてくれないと困るわね」
「あの人はお兄ちゃんの友達で、入学式とあとお兄ちゃん宛ての電話でしか話していないけど、放置されるなんてやだなぁ」
「本命しか相手していないの見ていたらムカツク」
「もう三週間ぐらい待って、何もしてくれなかったら怒り爆発しましょ」
「そうしましょ、そうしましょ」
「そうしましょったら、そうしましょ」
 
 適当に想像しながら述べてみたが、なんともまぁ、こんな具合に女とは理不尽な噂を立てるものだ。
 男が女との出会いを避けて草食化するのも、仕方が無いことなのかもしれんな。
 
 ん、盗賊ギルドと全く関係が無い噂だな……(。-`ω´-)
 
 

 どうやら港湾地区にある自宅には留守のようで。緑娘は、現在帝都にはいない模様。
 そうと分かれば、こんな場所はさっさと立ち去ってしまうのが吉。
 数ヶ月前、くだらん盗賊ギルドに入隊以来、今日まで数ヶ月間、盗賊ギルド並びにラムリーザのために、絶大なるご支援を頂きまして、誠にありがとうございました。
 不運にも、俺は盗賊ギルド壊滅を目指し、ヒエロニムス・レックス隊長と共に死力を尽くして最後の最後までベストを尽くし闘いましたが、力ここに及ばず、盗賊ギルド壊滅の夢は敗れ去りました。
 俺グレイ・フォックス――いやラムリーザは、今日、引退を致しますが、我が盗賊ギルドは現地点をもって滅です!
 
 

 そんなわけで、俺は帝都を後にしたのであった――
 
 
 
 
Sponsored Links



 
 
 前の話へ目次に戻る次の話へ

return to page top

©発行年-2020 らむのゲーム日記