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スプリングヒールの靴 後編 ~グレイ・フォックスの正体は?~

 
「こらっ! 物乞いっ!」
「3Gが居るっ!」
「くれてやるから、インベル伯ジャクベンの場所を教えろ!」


「彼の家なら、タロス広場にあるよ」
 
 
 グレイ・フォックスの依頼で、スプリングヒールの靴という物を探すことになった。
 スプリングヒール・ジャックは300年も前に没した盗賊なので、その末裔であるインベル伯ジャクベンを探すところから手をつけたわけだ。
 その伯爵は変わった人物で、外出するのは日没後だけ。昼夜逆転してしまったのだろうか、引きこもっていたんだろうな。
 

 伯爵の家は、タロス広場ですぐに見つかった。
 俺も港湾地区じゃなくて、こんなところに家が欲しかったりするのだけどなぁ……
 
 家の中に入ってしばらく進むと、中から「盗賊だ! 助けて!」などと声がする。
 まだ姿を見られたわけじゃないのに察しがよいことで。
 だがなんだか気が弱そうなので、遠慮なく奥へと進ませてもらう。
 いるよね、気が弱そうな相手にしかイキられないような奴。
 ――って俺じゃん(。-`ω´-)
 

 それでインベル伯ジャクベンだが、オーバーアクション気味の怯え様。
 ここまでビクビクされると、こっちが悪い事しているみたいで気が引けてしまう。
 いや、盗賊ギルドの仕事だから悪い事なんだけどね。
 

 話しかけても、こっちの顔すら見ようとしない。ここまで気が弱い奴は初めてだ。
 それでもインベル伯ジャクベンは、家の地下に一族の墓があると教えてくれた。
 鍵を渡してやるから、勝手にしろといった感じだ。
 それじゃあ遠慮なく、地下を調べさせてもらうとしよう。
 
 

 地下の墓地は洞窟のようになっていて、そこには何故か吸血鬼の一団が住み着いていた。
 顔、とくに目を見れば吸血鬼か人間かの区別はつく。
 しかしなぜ伯爵の家の地下に吸血鬼が?
 

 考えている暇はない。
 襲い掛かってくるなら返り討ちにするだけだ。
 こいつらたぶん、伯爵が臆病者だからこっそりと地下に住ませてもらっているのだろうな。
 セリデュールとかの事件もそうだったけど、帝都には吸血鬼が根強く住み着いているのだろう。
 俺以外の吸血鬼ハンターが、本ばかり読んでいて全然仕事しないから仕方が無い。
 
 

 洞窟の一番奥には、これまでのものとは違う立派な棺が置かれてあった。
 これがグレイ・フォックスの言っていた、スプリングヒール・ジャックの埋葬場所だろうか?
 ということは、この中にスプリングヒールの靴が入っているはずだ。
 
 しかし、中には靴はなく、普通の衣類、指輪などしか入っていなかった。
 その代わり、一冊の日誌が入っていたのだ。
 

 日誌を要約すると、とある盗賊が書いたもののようだ。
 そしてその盗賊の相棒が、ノクターナル自身から盗みを働いたと書かれている。
 それは、ノクターナルの目を盗んだモブか? それとも、グレイ・カウルを盗んだグレイ・フォックス自身のことか?
 しかし日誌には、その者の名前を思い出すことができないと書かれている。
 名前を忘れる――、それはノクターナルの呪いではなかったか? つまり、この盗賊の相棒はグレイ・フォックス自身だということになる。
 
 そして日誌にはさらに、その盗賊が吸血鬼化したことが書かれていた。
 最初に書いた内容からは13年が経ち、血を求めることしか望んでいないことが書かれている。
 

 さらに日誌は89年の年月が過ぎたことが書かれていた。
 ん? それだとグレイ・フォックスもそんな年齢なのか? おじいさんだったのか?
 そしてこの日誌を書いた者は、自分のことをインベル伯ジャクベンと呼ばれているようになっていた。
 昔はスプリングヒール・ジャックだったが、今ではインベル伯ジャクベンと――
 
 俺は日誌を閉じると、一旦洞窟から引き上げることにしたのである。
 
 
 
「秘密を知った奴を、このまま大人しく帰らせるわけにはいかんな」
 

 地下墓地から屋敷に戻ってきたとき、突然傍から声をかけられた。
 振り返ると、そこにはジャクベン・インベルが立っていた。
 さっきまで怯えたそぶりを見せていたが、そいつの目を見ると、どうやらこいつも吸血鬼のようだった。
 
 待てよ?
 
 日誌に書いてあったインベル伯ジャクベンと、このジャクベン・インベル伯爵は同一人物ではないのか?
 こいつは300年も前から生きていた吸血鬼なのだ。
 ジャックという名前だったが、今ではジャクベンと名を変えてひっそりと生きていたのだろう。
 隠者がベンと名乗るのは珍しくない。例えばオビ=ワンという者がベンと名乗ったように――
 
 というわけで、吸血鬼ハンターの一員としては、こいつも退治しておくのが筋だ。


 それではかねてから研究中であった新兵器を試してみようか!
 剣に見えるが、その実体は霊峰の指のエネルギーを固めただけだ。
 さらに高圧縮されているので、かするだけで霊峰の指を食らったのと同じだけのダメージだぜ。


 ジャクベン・インベルの剣をひらりとかわして、交差した瞬間に剣を叩きつけてやる。
 フィンガー・オブ・マウンテン・ソードの一撃を食らったジャクベンは、その場に崩れ落ちたのだった。
 
 
 スプリングヒールの靴は、ジャクベン・インベル自身が身に付けていた。
 俺は奴から靴を剥ぎ取ると、屋敷を後にしたのである――
 

 ………
 ……
 …
 


「スプリングヒール・ジャックの墓を見つけたようだな」
「その前に聞いておきたい事がある。あなたはジャックの知り合いではないのでしょうか?」
「それはない、彼は300年前に生きていた人間だ」
「別に不思議ではありません。アダムとかノアという人は900年も生きたとか言う話が有ったような、無かったような……。じゃなくて、ジャックの日誌にあなたの事らしきものが書かれていたのだが?」
「ふむ、どうやら君は盗賊ギルドでも気付いた者がほとんど居ない歴史の一片にぶつかってしまったようだな」
「歴史の一片とは?」
 
 グレイ・フォックスの話では、今目の前に居る彼は、初代グレイ・フォックスでは無いのだという。
 では、セブンだろうか? 帰ってきたグレイ・フォックスか? グレイ・フォックスエースか?
 そして日誌に書かれていたとおり、その初代グレイ・フォックスは、グレイ・カウルを盗んだのだが、ノクターナルの呪いを受けた後に間もなく死んだのだ。
 だがギルドの他の盗賊がカウルを拾い、彼の人物像と呪いを継いだ。その時他のギルドメンバーの中に、その別の盗賊が初代とは別人だというのに気がつく者は居なかったのだ。
 何世紀にも渡って、何十ものグレイ・フォックスが居た。傍から見たら、まるで不老不死のように――
 そして現在のグレイ・フォックス、今俺の目の前に居る男は、自分の代で最後にしたいと願っているのだそうだ。
 
 つまりこういうことか?
 不死だと思われていたギルドマスターのグレイ・フォックスは、中身を入れ替えつつずっと続いてきたものだった。
 しかしそれももう終わりにする。つまり、盗賊ギルドのマスターを終わりにして、突き詰めればギルドもおしまいにするということだろうか?
 俺がどうこうしなくても、勝手に盗賊ギルドは無くなるということだろうか?
 それなら今のグレイ・フォックスの正体はいったい?
 その辺のへっぽこ人間にマスクを被せただけでマスターになれるとは思えぬが……
 
 
「ところでスプリングヒールの靴はどうなった?」
「ああ、それならここにあります」
「あっぱれだ! これでパズルのピースは揃った。再びサヴィラの石を使ってもう一仕事しよう」
「そのサヴィラの石は、どう使っているのですか?」
「それは君が気にする必要は無い。順調に行けば、また近いうちに君を最後の仕事のために呼び出すことになるだろう」
 
 
 以上で今回の任務は終わりだ。
 俺はギャンデルの家から立ち去ろうと思ったが、ふと思いなおしてグレイ・フォックスの方へと戻っていった。
 

 やはりこのグレイ・カウルの下が気になるのだ――
 
 
 
 

 
 
 
 
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