単独での窃盗1 ~被害者の居ない泥棒一人目~
俺は帝都の市民を護るべく、グレイ・フォックスを捕まえるために盗賊ギルドに潜入した。
盗賊ギルドの入隊試験を合格し、晴れてスリになったわけだが、そんな称号は要らん。
だが、ギルドに加入しただけではグレイ・フォックスに会う事はできなかった。
もう少し潜入調査を進めるか、ギルドに忠義を示して信頼されるかが必要だろうなぁ。
「それで、あなたはどうするのかしら?」
「盗賊ギルドで仕事を任されるには、もっと経験が必要だってアーマンドは言っていたよ」
「盗賊ギルドの経験……」
「オンガーって人に、盗品を売ることでギルドの財源に貢献しろだとさ」
「で、あなたはホントにどろぼうさんをやるの?」
「う~む……(。-`ω´-)」
盗賊ギルドに潜入して、俺がどろぼうさんになってしまっては本末転倒だ。
ここは何かいい手は無いだろうか?
山賊の追い剥ぎは、この国では「合法」だしなぁ……
盗賊の方が稼ぎづらい国だ。
そこでまず考えたのは、近所で窃盗……
お向かいの家。
隣の家はアーマンドだったのでやめておいた。
「でも待てよ、特に港湾地区は大事にしろと言っていたな。ここで盗みをしたら、ギルドに怒られるかもしれん」
「ではどうするの?」
「う~む……(。-`ω´-)」
それにこんな近場でどろぼうさんをしたら、すぐに足がつくではないか。
「思いついた!」
「な、何?」
「スキングラードへレッツゴー!」
俺はここでとても良い作戦を閃いた。
誰にも迷惑をかけずに盗品を集める方法を思いついたのだ。
………
……
…
そしてスキングラードである。ユニコーンでの移動は割愛!
「ここがあなたのスリとしての第一歩を記す場所となるのね」
「やかましい」
「それで、どの家に入るのかしら?」
「ここだ!(`・ω・´)」
「割と立派な家じゃないの。誰の家?」
「グラアシア」
「誰? ――って死んだって言ってたわね」
「だから誰にも迷惑はかからないのである(。-`ω´-)」
そういうわけで、俺はグラアシアの家から売れそうなものを物色することにした。
持ち主は既に死んでいるのだ。これが盗品になるのかどうか知らんが、この国では持ち主が死んだら所有権はどこに行くのかな?
衛兵に怪しまれたらめんどくさいので、入り口に緑娘テフラを待たせて衛兵を中に入れないようにしている隙に仕事を済ませることにした。
さて、グラアシアの家。相変わらずグラアシアのくせに立派な家に住んでいる。
地下室にはたぶんまだ気持ち悪いメモが残っていると思うので後回し。
未だに次の住人が決まらないのは、パラノイアの住んでいた家には誰も住みたがらないということかな?
寝室にはバトルアックスが置かれていた。これは確実に売れるので頂いておく。
しかし枕元に斧を置いてどうするのだろうか?
監視されていると思い込んでいたから、自衛のためかな?
この砂時計、高く売れそうで実は金にならない。
町の樽の中にもたくさん入ってある。やはり物の価値がよく分からない国だ。
しかし、この本は売れるだろうな。
グラアシアの家には、やたらと多くの本が転がっている。
当面は、本盗みでやっていくか……(。-`ω´-)
――――
「お嬢さん、この家はあまりよくないぞ」
「あら、なぜかしら?」
「かなり頭のおかしい変人が住んでいたんだ」
「でも死んだんでしょ?」
「まあそうだが、あまり近づかないほうがいい」
「わかったわ」
――――
地下室からワインを頂いておいた。
ワインならそれなりの価格で売れるだろう。
根こそぎ奪うのもアレなので、今回はひとまずこのくらいにして引き上げることにした。足りなければまたここに来ればよいだろう。
こうして、被害者の居ないスリが成立したのであった。
「お疲れ様、それで盗品はどうするの?」
「盗品商オンガーは、ブルーマに住んでいるそうだ」
というわけで、今度はブルーマへの大移動。
………
……
…
さぁ、始まりの町へ再び戻ってきたぞ。
ジ・スカール先輩は大学に行ったから、この町の魔術師ギルドにあまり用は無いな。
他の事には目もくれず、オンガーを探すことにしよう。
オンガーの家はここだった。
こんな平凡な場所に、ひっそりと盗品商が住んでいる。
今は大人しく従ってやるが、いずれはこいつもひっ捕らえなければな!
家の中では、オンガーらしき人は暢気に寝ていたりする。
「こらぁ、起きんかぁ!」
「なっ、なんだねっ?!」
「盗品を売るからさっさと引き取ってくれ」
「おお、お前はグレイ・フォックスに従うものだな」
「……そういうことだ(。-`ω´-)」
そういうわけで、オンガーに盗品を買い取ってもらったのだが、なんともまぁ酷い価格差で。
鉄のバトルアックスで14Gにしかならない。
山賊が装備している緑色の防具はその50倍以上で売れるというのにさ。
盗賊なんて割が良くないよな、やっぱり追い剥ぎ狩りが一番だ。
「よし、これでお前からは金貨50枚分以上の盗品を買い取った。アーマンドに会ってみるがよかろう」
「作用でごじゃるか?」
たった50Gで価値を認めてくれたようだ。
なんか俺、山賊狩りギルドでも立ち上げようかなと思ったりした。
絶対国で一番金持ちのギルドになること間違いなしな気がするぞ、と。
さて、これでスリとしての最初の仕事は終わった。
グレイ・フォックスと対面できる日はいつになるのだろうか――?
おまけ