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潜入 ~狂戦士~

 
 オレインからの要求は、ブラックウッド商会に潜入して彼らの力の秘密を探るということだった。
 俺達は羊をウォーターズ・エッジに預けた後、そのまままっすぐレヤウィンへと向かっていった。
 まだ寝る時間まではしばらく暇があったので、先にブラックウッド商会のメンバーに加わっておこうと考えたわけだが――
 

「さて、どっちが潜入するか。二人同時だと怪しまれるし、向こうは俺のことをアークメイジだと知っているかもしれんしなぁ」
「それならあたしが潜入するわ。戦士ギルドの仕事はあたしの仕事」
「でも一人だと危険じゃ――いや、そんな奴が戦士ギルドに入ろうとか言い出すわけないな。潜入できるのか?」
「ダムであたしを置き去りにして、一人でクレムゾン・ブレードに潜入して遊んでいたくせに」
「いや、遊んでいたわけじゃなくて、置き去りにしたわけじゃないよ。ギルドのためにダムを調査しなきゃならなかったんだ」
「ギルドの仕事がそんなに大切なことだっていうの?」
「そうだよ、そのためにはソニアの力が必要なんだよ」
「ひどいっ! あなたも暗黒騎士団のように私を利用したいだけなのね?!」
「暗黒騎士団ってなんや? もーえーわ、確かに俺は君を置き去りにしたよ。でもそれは君を戦いに巻き込みたくなかったからなんだよ」
「嘘よっ! あたしと一緒にいるのが嫌になったんでしょ?!」
「めんどくさ……、とっとと潜入してこい!」
「はぁい」
 
 なんかどこかで聞いたような茶番劇を演じた後、結局戦士ギルドの仕事だからというわけで緑娘が潜入することになった。
 まぁマグリールがあっさりと移籍できるような集団だ。緑娘もすんなりと受け入れられるはずさ。怪しまれなければな。
 
 ………
 ……
 …
 
 30分後――
 

 
 日は暮れて、すっかり夜になってしまった。
 緑娘は中に入っていったきり、何も音沙汰が無い。誰かが入っていくもなし、出て行くもなし。
 なんだろうか? 入団試験でもやっているのだろうか?
 怪しまれてしまったら騒ぎになるはずだが、それっぽい喧騒も聞こえてこない。
 
 静かな夜だ……
 
 ………
 ……
 …
 
 一時間後――
 
 さすがに遅すぎないだろうか?
 ひょっとして素性がばれて暴れる間もなく捕まってやられてしまったか?
 
 こうなったら自分も志願者を演じてと、中に入って様子をみようと考えた時――
 

 
 あ、出てきた。
 
「おい、どう――」
 
 話しかけようとしたが、すぐに口をつぐんだ。
 一人じゃなくて、三人の他のメンバーと一緒だ。
 
 緑娘を含む四人は、そのまま無言で建物から離れていった。
 どうでもいいが、ブラックウッド商会の装備を身に付けるのは嫌がったようだな。
 
 とりあえず行き先が気になるので、こっそりと後をつけていくことにする。
 なんだろうか?
 これが入団テストか?
 それともいきなり仕事を任されたということだろうか?
 
 

 集団は、白馬山荘を通り過ぎて北へと向かっている。
 道中何もしゃべらないのが不気味だな……
 少なくとも緑娘は、何かいろいろ聞いたりするだろうに。
 いや、ブラックウッド商会は思ったよりも厳格な集団なのだろうか?
 
 

 そして集団は、ウォーターズ・エッジに到着すると、三手に分かれて行動し始めたのだ。
 一人は集落の奥へ、一人は手前の家に。緑娘ともう一人は奥の家へと向かっていった。
 
 そして緑娘と一緒だった者が家に入った後で、緑娘が一人になったところで傍へと駆け寄っていく。
 他の者に見つからないようにいろいろと話を聞いて――
 
「なっ、なんだお前は! 何をするうわやめ――」
 
 その時、家の中から叫び声があがった。
 あれは、ぬいぐるみ泥棒事件の時に情報を聞いたエデュアルドじゃなかったっけ?
 先ほど、緑娘と行動していた一人が入っていったようだが、家の中で何があった?
 
 ――と、家の中から血まみれの男性が飛び出してきた。
 やはりエデュアルドだ、覚えているぞ。
 しかし、一体何が起きているのだ? なぜウォーターズ・エッジの住民がブラックウッド商会に襲われているのだ?
 

 
 …………(;-`ω´-)
 
 あろうことか、緑娘は飛び出してきた傷だらけのエデュアルドに対して、とどめを刺すかのように蹴り刺してきたのだ。
 な、なぜだ?!
 
「おい、何をしているんだ?!」
 
 思わず声をかけてしまったが、緑娘は俺の言葉が聞こえていないのか、そのまま隣の家に入っていった。
 俺が駆けつけたとき、エデュアルドは胸に穴を開けられて絶命していた……
 
「ちょっと、どうしてあなたが?!」
 
 隣の家から、ビエナ・アメリオンの悲鳴があがった。
 まさか緑娘が?!
 
 

 ビエナの家に飛び込んだとき、そこには目を疑うような光景が飛び込んできた。
 緑娘が、ビエナを片腕で持ち上げて首を絞めている。
 
「な、なぜ……」
 
 それがビエナの最後の言葉だった。
 ビエナが事切れたのを確認した後、緑娘は掴んでいた首を手放す。ビエナはそのまま崩れ落ちて、動くことはなかった。
 
 緑娘は振り返った時、俺はとっさに物陰に隠れた。
 
 今緑娘の目に入ることは危険だ。
 そんな予感が浮かび上がり、接触することを避けたのだった。
 
 しかし、緑娘にあんな力があったとは?
 人一人を片手で持ち上げる力があるのなら、以前自分の非力さを証明するために、俺に突きを放ってきたときのあれは何だ?
 非力も人を欺くための隠れ蓑で、本当は強力だというのだろうか?
 わざわざ強力を隠して、ニードルヒールなどという特殊な武器を使うだろうか?
 あの力があれば、蹴り刺すよりも投げ飛ばすほうが効率的、というより片手で首を絞め殺すなんて相当な力だぞ?
 
 俺が忘れているだけで、緑娘の本当の力は――
 
 
 ビエナの家からそっと出たとき、そこにも今までの緑娘からは想像もつかないような光景を見せ付けてきたのだ。
 

 
 なんでや……
 
 ソニアよ、君は羊を愛してやまなかったのではないのか?
 放っておいたら一日中でももふもふしていて、密輸団からは全力で羊を守りに行った。
 コロールでは一匹買ったこともあるし、アンヴィルの三匹を一日かけてここまで連れてきた君はどこに行ったのだ?
 それに、その羊はひょっとしてアンヴィルで救った自分の羊じゃないのか?
 
 
 この時俺は、緑娘が普通ではないと確信した。
 ブラックウッド商会は緑娘にいったい何をしたのだ?
 
 だが近寄ってこの惨劇を止めるのも難しい。
 緑娘に下手に接近すると、俺もさっきの常識を超えた力でくびり殺されるかもしれない。
 
 仕方がない、霊峰の指で失神させるか?
 
 
 ――と思ったときだ。
 羊を散々叩きすえた後、緑娘はばったりと倒れて動かなくなってしまった。
 そしてブラックウッド商会の他のメンバーは、倒れた緑娘は放っておいたままレヤウィンへと戻り始めたのだった。
 

 
 おそるおそる、倒れている緑娘へと近づいていった。
 死んではいないようだが、身体は冷え切っていて冷たい。
 
 ブラックウッド商会で何があったのか、何をされたのか。
 緑娘が覚えていれば聞き出すことができるのだが――
 

 
 今の俺にできることは、緑娘をどこか安全な場所へと運ぶことだけだった……
 
 
 
 
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