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クララベラ号の積荷 ~降格処分の憂さ晴らし~

 
「降格!」
「なんでやねん」
「なんとなくじゃ!」
 
 
 オレインから引き受けたデリケートな任務。
 それは、レヤウィン南の放置鉱山へトロールの退治に向かったヴィラヌスの音沙汰が無くなってしまったことに対する調査だ。
 しかしヴィラヌスは、ブラックウッド商会に邪魔をされ、トロールに殺されてしまった後だった。
 その重苦しい報告をオレインにしなければなくなってしまった。
 
 コロールにて――

「何している?」
「うーん、やっぱり報告しづらいわ……」
「しょうがないな、俺が話をしてやるからほら行くぞ」
 
 やはり気が乗らない緑娘ソニアに代わってオレインに報告する。

「オレインさん、悪い話と悪い話と良い話があります、どれから聞きますか? ――といいつつ最初の悪い話からします、今回の任務で良い話はありません」
「まわりくどい言い方をするな、簡潔に述べよ」
「ヴィラヌス・ドントンは死にました。これがその証拠となる日記です」
「死んだ? 死んだだと?! それが日記か? ぐぬぬ、ブラックウッド商会め……」
「それでマスターにはどう報告をすればよいでしょう?」
「これは俺の責任だから、俺がヴィレーナに伝える。お前らはしばらく身を隠してくれ。アザーンかバーズを頼れ。問題なければアークメイジよも魔術師ギルドにでも居るんだ」
 
 やはりめんどうなことになってしまったようだ。
 息子を持ったことのない俺にはわからぬことだが、長男に引き続いて次男まで失った戦士ギルドマスターヴィレーナの心境はいかに……
 
「さて、しばらく身を隠せと言われたがどうする?」
「あたし悪いことしてないもん、隠れる必要ないわ」
「それもそうだが、戦士ギルドで不安定な状況になっているのは事実だ。一旦コロールを離れよう」
「じゃあ港町に行くわ、アザーンに仕事貰う」
「そうするか」
 

 というわけで、ウェザーレア経由でコロールから南下。
 港町アンヴィルに滞在し、ほとぼりが冷めるまでコロールから離れておくことにした。
 

 曇天模様の空が、戦士ギルドの未来を、そして緑娘の未来を象徴しているのか?
 まぁ戦士ギルドに行き詰ったら、いつでも魔術師ギルドにウェルカムだ。
 
 ………
 ……
 …
 

「なんでよ! あたし何も悪いことしてないのに、なんとなくで降格されるなんて納得行かない!」
「すまぬ、なんとなくじゃは冗談だ。オレインがヴィレーナに、お前が関わった任務について話をしたのだ」
「あたしはヴィラヌスを助けに行っただけ! 悪いことしてない!」
「だが彼女はこの知らせを聞いて、オレインを除名処分にしたのだ。さらに以前一緒の任務に関わったということで、お前はディフェンダーに降格となった。上司の引責辞任というのはよくあるが、お前は部下だから引責降格ですんだのだ」
「くっそ~、あいつはあたしからラムリーザを奪おうとしただけでなく、職まで奪おうとするのか~!」
 
 待て緑娘落ち着け。
 ヴィラヌスは緑娘から俺を奪おうとしたのではなくて、俺から緑娘を奪おうとしたのだ。
 それに降格しただけで、お前は除名になったわけではない。
 
「そこで、というわけではないが仕事があるのだが」
「知らない! マグリールにでもやらせたらいいんだ!」
 
 待て待て、マグリールはギルドを裏切ってブラックウッド商会に移籍したじゃないか。
 ダメだな、ちょっと落ち着かせないと話が進まない。
 
 
 そういうわけで、一旦アザーンの前から失礼して、気晴らしに港へ行くことにした。
 海はいいぞ、曇った心を明るくしてくれるんだ。
 

「どうだ? 気分は落ち着いたか?」
「この天気が嫌い! なんか気分まで曇ってくる!」
「ダメか……。それならちょっとこの船の中に入ってみようか。帝都には船を改装して酒場にしたところがあり、そこに泊まると海賊に――」
 
 ダメじゃないか。
 といいつつ、外に出ていてもこの天気じゃ心も晴れないので、仕方なくこの船クララベラ号に入ってみることにした。
 入ったところで事態が好転するわけじゃないけどな。
 
 しかし、俺たちはそのクララベラ号の中で予想もできないような光景に出くわしたのだった。
 

「ちょっとあなたたち羊さんに何をしてるのよ!」
「なんだ侵入者か? 俺たちが何をしようがてめぇの知ったことじゃないだろが!」
 
 理由は全く不明だが、船の中では羊の虐待(?)が行われていた。すでに一匹は殺されているようだ。
 羊マニアの緑娘にとっては、看過できない事態だろうな。
 思ったとおり、緑娘は三人の海賊(?)に飛び掛っていった。
 

「羊さんをいじめるなぁっ!」
「貴様っ! 邪魔をするのかっ?!」
 

「もちろん、邪魔してあげるわ!」
「貴様許さんぞ!」
 

「羊さんをいじめる方が、もっと許せない!」
 
 電光石火の三段蹴りですか。
 魔剣なんか使わなくても、十分に強い緑娘であった。
 今日の緑娘は機嫌が悪いから、全く手加減しなかったのだろうな。
 哀れな海賊――なのか? こいつらいったい何者なんだ? 羊虐め同好会?
 

「もう大丈夫よ、野蛮人は全員片付けたわ」
 
 怯える羊をなだめる緑娘を尻目に、俺は三人組の懐を漁ってみた。
 こいつらの鎧はそれほど金になりそうにないから追い剥ぎはしらないけど、何かこいつらの正体を知る手がかりがあるかないか。
 
「む、こいつらは――」
「こいつらは?」
 

「家畜密輸業者で羊を密輸していたようだ」
「なんでその積荷を虐めるのよ意味わかんない」
「この手紙によると、なんか羊の密輸に嫌気が刺してすべてをぶち壊してやろうとしていたみたいだ。ちなみにこの鎧を着ていないのが船長だったみたい」
 
 密輸業者か。
 先日訪れたタスラも密輸人の巣窟だったな。
 アンヴィルは港町だけあって、いたる所に密輸人が居るようだ。
 

「あっ、折の中にも入れられてる!」
「元々折の中に入っていたのを外に出して虐待していたのだろう」
「よかった、この子はまだ生きてる」
 

 助け出した羊をもふもふし始める緑娘。
 これはこれでいいだろう。
 天気は優れないが、この羊が緑娘の不機嫌な気持ちを癒してくれるだろう。
 
 その間に俺は、船の中のほかの場所を調べてみることにした。
 密輸人がまだ残っているかもしれない。
 
 
 船はさらに下層へと降りられるようになっていた。
 その降りた先には――

 密輸人がまだ残っていた。
 
 別に誰かに頼まれたわけじゃないが、密輸人は悪人なので始末しておこう。
 一応俺も、治安を守るはずだけど役に立たない衛兵に代わって仕事をしている戦士ギルドのはしくれだからな。
 
 下層部での騒ぎを聞きつけて、緑娘も降りてきたようだ。

「なんなの? 下にも羊さんが居るの?」
「いや、居なかった。羊は上に居るのだけだな」
「ねぇ、この羊さんたち引き取ろうよ。どうせ密売品だから行き場なんてないと思うの。でも羊さんに罪はないわ」
「えっと、四匹居て一匹はもうやられてしまっているから三匹か……」
「この可哀想な羊さんのお墓も作ってあげなくちゃ」
「まあいいや、好きにしなさい」
 
 なんか羊が三匹も無償で手に入って、緑娘の機嫌も直ったようだ。
 でも本気で羊を増やして牧場経営でも始めるのだろうか?
 それとも飼いならして、「怒涛の羊」という技でも編み出すつもりなのだろうか?
 またレヤウィンに運んで、ミーシャの所に預かってもらうことになるか。
 そのうちミーシャの小島が羊島になってしまうだろう。
 
 

 外に出ると、先ほどまでの曇天が嘘のように晴れ渡っていた。
 天気は緑娘の心とリンクしているのだろうか?
 何はともあれ、湿っぽい雰囲気はこれで一掃できたかな?
 
 
 
 
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