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ぬいぐるみ泥棒 ~ミーシャのパンダさん~

 
 さあ、今度はレヤウィンの魔術師ギルドで、緑娘ソニアの推薦状を書いてもらう番だ。
 

「ダケイルさん、予言はおいといて、この娘の推薦状を出してください」
「若人よ、ギルドはいつでもあなたを待っておるぞ。推薦状ならすぐにでも出してやろう」
「では出してくれるのですね、予言の仕事は新入りのこの娘に出してあげてください」
「見える、見えるぞ私には。娘が近づいてきておる、小さな娘じゃ、すごく困っておる。そなたはその少女を助けなければならん」
「それは推薦状とは別件でお願いします。というかどっちみち仕事があるのね。――って少女?」
「ふえええぇぇぇぇ~~~んっ!」
 
 その時、魔術師ギルドの扉が勢いよく開いたかと思うと、小さな少女――これだとなんか頭痛が痛いみたいだな、少女が飛び込んできた。

「おうおうミーシャや、どうしたのかね?」
「パンダさん取られた、ふえ~ん!」
 
 明るい金髪をツインテールに結んだ少女は、泣きじゃくりながらダケイルさんにパンダさんが取られたなどと言っておる。
 誰だよこの少女は、そしてパンダさんって何だよ。
 

「えっと、その娘は?」
「ああこの娘はミーシャ。うちに居るギルドメンバーの遠縁に当たる娘でな、丁度遊びに来ておるのでうちで預かっておるのじゃ」
「で、パンダさんとは何でしょね?」
「むむむ……」
 
 そこでダケイルさんは考え込むそぶりを見せる。
 得意の占いで真相究明ってわけですかね?
 
「見えた! ここから少し北へ行ったところへある小さな村、ウォーターズ・エッジにこの少女を困らせた者が居ると出た」
「だとさ、がんばってパンダさんとやらを取り戻してやってくれ」
 
 俺はダケイルさんの占いを緑娘に押し付けた。
 しかしいつもの通り、手伝ってくれなくちゃ魔術師ギルドやらないの一点張りだ。
 仕方が無いので、街を出て北へと向かう。目的地はウォーターズ・エッジ、確か小さな村が街道沿いにあった記憶はある。
 

「さて、ここが白馬山荘ですねぇ」
 
 すたすたすた――
 実際の足音からしたらコッコッコッと、石畳に踵の針の当たる高い音。緑娘は振り向くことすらなく先へと進んでいった。
 そんなにマゾーガ卿が怖かったかね? 俺も今でも慣れずに少し怖いけど……(。-`ω´-)
 

 というわけで、ウォーターズ・エッジだ。
 早速村人に、最近怪しい奴がここに来なかったか? と訪ねてみる。
 緑娘は調査よりも羊の方が気になるようで。もふもふしたいですか?
 
「怪しい人なら、裏の牧場で踊って居ましたよ」
「踊ってる? なんだろね、見に行ってみようか。おい、羊はほっといて村の裏へと向かうぞ」
「もふ~、もふ~」
 
 羊の毛でもふもふしていた緑娘を羊から引き剥がすと、そのまま村の裏へと向かっていった。
 そんなに羊が気に入りましたか? って――
 
 …………(。-`ω´-)
 

「どやっ! オラのパンダさんっ!」
 
 ぬいぐるみですか、パンダさんとは……
 ってかこのオヤジ、少女からぬいぐるみを奪って何得意げになっているんだよ、怪しい奴だな!
 ――って、怪しい奴を探しに来たんだっけ、こいつからぬいぐるみを奪ってやればいいわけだな。簡単な仕事だ。
 
『パンダさん♪ パンダさん♪ 強いぞ強いぞパンダさん♪』
 

 なんかこいつ、パンダさん――ぬいぐるみを振り回して踊りだしたよ。変な歌も歌いだしたし、かなり危ない奴じゃないのか?
 ――あ、村人が踊っているって言ってたなw
 
「何かと思えばこのオヤジ! 少女からぬいぐるみを奪って狂ったように踊ってるなんて許せない!」
 
 なんか緑娘、えらくご立腹な様子で。
 すんごい表情でにらみつけているみたいだねぇ……

『パンダさん♪ パンダさん♪ ふかふかふかふかパンダさん♪ でもパンダさんは、人間襲うよ?』

「くんかくんか、おおっこれはっ?! 幼女の香り!!」
「きんもいんじゃこの変態オヤジ!!」
 

 痛っ! 思わず目をつぶってしまった。
 馴染みのザリッでもグサッでもなく、普通にドスッという音が響く蹴り。
 なんて所を蹴り上げてしまうんだこの緑娘はw
 そこを攻撃するならそんな尖った針なんか必要なかろうに――って、普通の敵はそこは鎧でガードしているか。
 

「あ、ちょっと待ったちょっと待った」
 
 俺は緑娘が踏み刺し殺そうとするのを慌てて引き止めた。
 別にこのオヤジを守りたいわけじゃない、しかしこれ以上の攻撃はマズい。
 
「何よ、こんな変態死んでしまえばいいのよ!」
「いや、変だからと言って殺したら、こっちが犯罪者になってしまう」
「だってこいつ泥棒じゃないの」
「それもそうだな、と言っても窃盗ぐらいで死罪に――いや、俺達は衛兵じゃないからそこまでする権限は無いよ」
「山賊とか追い剥ぎはやっつけているのに?」
「あれは正当防衛だからね」
「じゃあこいつどうするのよ」
「連れて行く。君はそっちのぬいぐるみを持っていってくれ」
 

 俺はこの変態オヤジをひょいと担ぐと、ある場所へと運び始めた。
 緑娘はまだ気がすまないみたいで、俺の担いでいる者をすごくにらみつけてくる。
 そんなにぬいぐるみを穢されたことがご立腹かね? 女の子の気持ちはわからん。いや、わかるような気もするが、別にぬいぐるみぐらい――、いかんのだろうなぁ。
 この変態オヤジは、よっぽど緑娘の金的が効いたのか、気を失ったまま意識を戻さない。
 そしてそのまま、俺はレヤウィンの城へと向かい、さらに地下牢へと向かっていった。 
 
「そいつは何かね?」
「ちょっとした泥棒ですよ。あと少し頭がおかしいので、しばらく閉じ込めて置いてくださいな」
 

 衛兵に説明して、このぬいぐるみ泥棒を牢屋の中へと投げ込んだ。
 
「一生入ってな、この変態!」
 
 緑娘はまだ怒っているようだが、こうしておかしな泥棒はめでたくお縄となりましたとさ。
 なんかグラアシアを思い出す、そんな出来事でしたねー。
 
 ………
 ……
 …
 

「ほらっ、パンダさんを取り返してきてあげたわよ」
「やったぁ、パンダさんだぁ!」
 
 えーと、ミーシャだっけ?
 金髪の少女は緑娘からぬいぐるみを受け取ってご満悦な感じ。
 

「よくやってくれました。推薦状ならもう送っています」
「結局仕事が必要だったのかどうかわからん展開だな」
「そこで新たな予言が下っておるのじゃか?」
「だとさ、ソニア」
「あたし知らないもん」
「ねぇねぇ、ミーシャのひみつちきに案内してあげるよ」
「とまぁそういうわけだ、俺達はこの娘の相手をしてあげなくちゃいかんので、さらばでござる!」
 
 そういうわけで、この少女を利用して予言から逃げ出したのであった。
 
 ………
 ……
 …
 

「ここがミーシャのお気に入り。町の中は面白くないからここで遊んでいるんだ」
「へー、ミーシャちゃん、そのパンダさんには名前あるの?」
「んーとね、んーとね、パンダさんはパンダさんだよ~」
「そうなの~」
 
 なんだか仲良くやっているようでよろしいことです。
 緑娘も結局は、ぬいぐるみの好きな女の子なんだねと。
 
「ねぇねぇ、今度また来てね。ミーシャが新しく作っているぬいぐるみ、お姉ちゃんにも一つあげる」
「ほんと~? 楽しみにしているよ!」
 

 青い空、白い雲。
 なんというか、平和だねぇ……
 
 
 
 
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