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沈みし者 ~神とは何か?~

 
「コロールで仕事があるぞ。ヴィレーナ・ドントンに会うがよい」
 
 アンヴィル戦士ギルドでの仕事は一旦終わりで、次はコロールのギルドで仕事があるようだ。
 緑娘ソニアは、戦士ギルドで栄達するという野望――といっても最終的な野望のための足がかりに過ぎないようだ――を持っているみたいなので、「早くコロールに戻りましょう」などと言ってくる。
 早く戻りたいかね? それなら徒歩ではなく馬を使うべきだが。
 

「なんで馬は嫌なん?」
「あたしがただの馬で、あなたがユニコーンなのがずるい」
「そんなしょうもない理由で……」
 
 しかし嫌がるものはしかたがない。
 というわけで、街道を通れば魔物が出現するので、ゴールドコーストの大平原を横切ってコロールに戻ろうと思う。

 なんだか城のような建物が見えるが、確かクヴァッチという名前だ。
 誰もその街については語ろうとしないので、とりあえず今の地点では訪れていない。
 なんだろう? 独立した自治領みたいなものだろうか?
 魔術師ギルドでも、クヴァッチの支部がという話は一度も上がってこなかった。
 まぁ戦士ギルドの仕事で行くことになれば、改めて訪れることにしよう。
 
 こうして、未知の都市を右手に眺めながら大平原を東へ向かっていたところ、人気の無い農場へと辿りついた。

 
「なんだろう、誰も居ないのかな?」
「畑とか放り出して、消えちゃったみたいね」
「また透明事件かな?」
 

 扉には鍵はかかっていなくて、中には誰も居なかった。
 
「うーん、透明化しているわけではなさそう」
「その透明化って何かしら?」
「ん、以前君が霊峰の指でダメージ受けたときに泊まった宿があるだろ? あそこは以前魔術師の研究の影響で村中透明人間にされていたことがあるんだ」
「ああ、あの村のことね。でもここは村じゃなくて、一軒家の農場みたい」
「シェトコーム農場か」
 
 よく見ると、テーブルの上にある器の中に、日誌の一部のような紙切れが残されていた。

 
「沈みし者って何かしら?」
「深き者とか近き者だったら、ダル=マという娘をハックダートって村から救ったときに遭遇したけどな。ダル=マにとって、俺はヒーローなんだとさ」
「何それ?! ヒーローって何? あなたその女とひょっとして?! だったらその女、絶対に許さない!」
「いやだからすぐにそう騒がない。ああ、ダル=マに会わせてやるよ。会ったらわかる、俺とは何も無いということが」
 
 いちいちめんどくさい。
 アリーレさんはそれなりに綺麗な人だからめんどくさかったけど、さすがにダル=マは会った途端に緑娘の不安や不満も吹き飛ぶこと間違い無しだ。
 この分だとあとは、マゾーガ卿のことでも絶対に一悶着あるな。
 
 さて、この日誌の切れ端には、この近くにある砂岩洞窟――サンドストーン洞窟とも呼ばれている――の奥深くにいる、その沈みし者に会いに行こうとなっていた。
 気にする必要も無い気がするが、沈みし者というのも興味が無いわけではない。
 
「スライシェって人の安否は気になる?」
「誰それ? 知らない」
「この日誌を書いた人みたいだけどな」
「ヒーロー気取りね。ん? ヒーローと言えば……」
「さあ行くぞ」
 
 なんか緑娘が余計なことを思い出しそうな気がしたので、さっさと洞窟へと行ってみることにした。
 

 というわけで、砂岩洞窟である。
 なぜかこの国の洞窟って、どこも木でできた入り口がついているんだよな。
 例外としては、自殺滝のふもとにあったグリズリーの洞穴とかかな?
 

「むっ、こいつはウィル・オー・ウィスプ。物理攻撃は効かないから蹴っても意味が無いからな」
「あらそうなの?」
 

 こんな敵にも全然慌てる様子も無い緑娘。まぁ魔力の鎌があるからな。
 そういうわけで、光り輝く敵を排除して先に進む。
 どうでもいいけどこの洞窟、やたらとネズミが多いな。
 
「ダル=マってどんな人なの?」
 
 洞窟の中を進んでいるときに、緑娘はぽつりとつぶやいた。
 覚えていたか……(。-`ω´-)
 
「コロールの街に住む女の子――でいいのかな……」
「へぇ、それじゃあなたはその女の子のヒーローなのね?」
「えーとね、ダル=マはコロールの雑貨屋の娘で、ハックダートという村に届け物に行ったんだ。でもそこで深き者とか近き者とかに捕まっていけにえにされそうになっていたから救出しただけだよ。下心は絶対無いから」
「じゃあ何でわざわざ知らない国の知らない街の知らない女の子を助けようって思ったの?」
「ダル=マのお母さんが気の毒だったからだよ」
「そういうのって、衛兵の仕事じゃないのかしら?」
「それを言われると言い返せないが、この国の衛兵はいまいち仕事内容がよくわからんから。膝とかに怪我をした冒険者の成れの果てかもしれないし」
「それであなたは彼女の中でヒーローなのね」
 
 緑娘は、不機嫌そうにそう吐き捨てた。
 そこにスプリガンが襲い掛かってくる!
 なぜ森の精みたいな奴が、洞窟の中に居るんだよ!
 

「うっとうしいわね!」
 
 緑娘の蹴り刺し一閃、スプリガンは樹液を滴らせながらそこに崩れ落ちた。
 俺は何をしていたかだって? スプリガンが召喚した熊を可愛がってやっていたさ。
 

「うーん、この先は行き止まりかな?」
「あなたはね――」
「ん? 何だ?」
「あなたはあたしだけのヒーローでいいのよ」
「…………(。-`ω´-)」
 
 これは嫉妬か? 束縛か?
 
「でも、困っている人を見過ごせないだろ?」
「今後はあたしも一緒に人助けする」
「――よろしく頼むよ。君が居てくれたら心強いし」
 
 この一言が効いたか?
 緑娘は少しだけ不満は解消されたようだ。
 

「これは分かりにくいぞ。こんなところにメモを残すなよ、せめて中に入れろだな」
「置いたのじゃなくて、落としたのじゃないかしら?」
 

 手紙の主スライシェは、沈みし者に忠誠を誓っていたというのだろうか?
 そもそも沈みし者って何? 神様? 彼の言葉を広めたというのは神託か?
 
「沈みし者と聞いて、どんな奴を連想する?」
「そうね、溺れている人かしら。岩を抱かされて海の底に沈められた人」
「すごい発想だなそれは」
 

 洞窟の奥には、野営をした跡も残っている。
 この洞窟は、元々は神殿か何かで、沈みし者という神様を祭っていたとか、そんな場所ではないのだろうか?
 
 やたらとたくさん襲い掛かってくるネズミを蹴散らしながら、さらに奥へと進んで行った結果――

「死んでるな」
「死んでるわね」
「日誌の残りがあるみたいだ」
 
 そこには、タムリエル全土を救済するために、沈みし者という神に会って供物を捧げようとしたこと。
 しかしここまでやってきたが、一匹の魔物に襲われて致命傷を受けてしまったことが書かれていた。
 
「神様に供え物ね。お月様にお団子を備えるぐらいでいいのに。あなたもそうでしょ? 神様にお供え物」
「最近の邪神は、強引に供えて欲しいものを奪ってくるから気をつけろよ」
「なにそれ怖い」
「メファーラ、シェオゴラス辺りの神には近づくな。あとサングインもヤバい。俺はこの三体を、三大邪神と名づけている」
「どんなにヤバいの?」
「追々教えてあげるさ。英雄物語にもならない悲惨な物語を」
 
 スライシェの遺体を前にして、そんな雑談をしていたために気がつかなかった。
 俺たちの傍に、危険が迫ってきていたことを――
 

「ちょっとっ、ラムリーザっ、なんか居るよ!」
「うわっ、こいつか?! こいつがスライシェを?!」
 
 背後にゴーレムのようなものが近寄ってきていた。
 そうだ、スライシェは魔物に致命傷を負わされたと日誌に書いていた。
 その魔物がまだこの近辺をうろついている可能性もあったのだ。
 
「こいつは魔法生物みたいだから、物理攻撃はあまり効かないかもだぞ」
「じゃあ魔法の鎌で戦う!」
 

 敵は雷を帯びているような感じだったので、霊峰の指ではなく炎を主体に戦ってみる。
 辺り一面火の海と化す。
 う~む、近接戦闘の緑娘とは、戦いの相性が悪いかもしれない。
 

 俺の激しい攻撃で、緑娘は敵に近づけないでいる。
 
「熱いわね!」
「そりゃあまぁ、火炎の魔法だから熱いのは当然。炎が冷たかったら、それは異次元」
「なんかあなたはこの国に来てから魔術が強くなってる」
「アークメイジだからな」
 
 雑談をする余裕があるというかなんというか、殺伐としていてもつまらないので楽しく戦おう。
 緑娘といがみあうことになったとしても、仲良く喧嘩したいものだ。
 

 そして、ついに敵を破壊することに成功した。
 
「これでスライシェも救われたかな? 仇討ち成功といったところか」
「今の魔物が沈みし者だったらどうするの?」
「襲い掛かってくる神様……、三大邪神よりもさらに性質が悪いので、滅ぼしておくに越したことは無いということでそっちでも結果オーライ」
「それで、人助けができて満足かしら?」
「すでに死んでいるしなぁ、救えはしたが助けられなかったってことか」
「こういうことこそ戦士ギルドに護衛を依頼したらいいのに」
「神様事だからな、自分でやらないとな」
 
 その過程で、酷い目に会うことはある。
 要は、正しき神を信じ、正しき道を進むべし。
 語りかけてくる神は危険。供え物を強引に奪う神はもっと危険。
 気をつけよう。

 こうして、シェトコーム農場と沈みし者についての出来事は終わった。
 
 
 
 
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©発行年-2019 らむのゲーム日記