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不運な店主 ~どろぼうさん~

 
 アイレイドのダムから戻ってきて、再びアンヴィルでの一時の休息。
 そんな中、戦士ギルドのアザーンから新たな仕事が舞い込んできたのだった。
 

 一応同行するが、戦士ギルドの仕事をするのは緑娘主体だ。
 俺的には緑娘も魔術師ギルドでのんびりとしていてくれてかまわないのだが、どうやら魔術師と戦士の両方面で頂点に立ち、この国を支配してやろうと言う物騒な野望を持っているのだ、この娘は。
 
 仕事内容は、空き巣問題。ノルバート・レレスというアンヴイルの高級品店の店主が、空き巣に悩まされているという。それを止めて欲しいという内容だ。
 う~む、戦士ギルドの仕事だろうか?
 衛兵の仕事だと思うのだけどなぁ。
 これは見習い戦士だとこうした雑務を、かな。俺の戦士のイメージは、どこそこに行って野盗を退治してくれとか、どこそこの抗争に傭兵として参加して暮れとか、そういったイメージなのだけどな。
 まぁいいや、俺の仕事じゃないし。
 
 どうでもいいけど緑娘、腰のラインを強調した立ちポーズでアザーンを挑発しているな?
 誘惑するだけ誘惑して、相手にしないのだからたちが悪い。まぁ俺の婚約者を自称するのなら、相手にしたところでその話はご破算さようならだけどな。
 
 さて、ノルバート・レレスの店だが、港に面した場所にあるというのだ。
 高級品店で何を売っているのかわからんが、どうせ追い剥ぎした装備より安物を売っているのだろうな。
 なんかね、エンチャント極めて、安い装備を買ってきてエンチャントして売れば簡単に大金持ちになれそうな気がする今日この頃。
 あまり重要視していなかったが、エンチャントにも目を向けてみようかな。

「ねぇ、ここがレレスの店みたいだわ」
「今回の仕事、俺はどこまで手伝えばいいのかな?」
「とりあえずレレスに会うから一緒に来て」
 
 なんだろ、他の男と二人きりで会いたくないのかな? この娘は。
 

 レレスはなんだか気の弱そうな店主さんだった。
 アザーンから聞いたとおり、大量の商品が盗まれているというのだ。補充しては盗まれるの繰り返しで、鍵を変えても無駄だという。
 盗みか。ギルドの仕事で何回か盗みをしたけど、それで生計を立てるとは考えたことは無かったな。
 まぁ盗みを働いたのは、ジ=スカールのイタズラの片棒を担がされたのと、フィンガーオブザマウンテンの書を盗んだだけだけどな。
 エンチャ装備を売る、それを盗む、また売る。このループで永久機関ができないだろうか?
 
 とにかくその盗賊は、深夜にやってくるらしい。
 一晩店内で張り込んでみてください、というのが依頼の内容だった。
 要するに、現行犯で犯人を捕らえろということだろうな。
 
 それだけ伝えると、レレスは隣の宿屋で待っていると言って店から立ち去った。
 

「――で、どうする? ここで張り込むのか?」
「ええそうするわ。なんだか探偵みたいな仕事ばかりで面白くないけど、仕事は仕事。クライアントは神様でしょ」
 
 なんだかんだでこの娘は、俺の言ったことに素直になるんだな。可愛いじゃないか、事実美女だけどな。
 
「で、俺はどうすればいい?」
「そうね、ここからはあたし一人でやるから、あなたは魔術師ギルドに行ってダムの報告でもしていたらどうかしら?」
「そっちも君の仕事だろ?」
「いいの、あたしはここを離れられないし、報告ぐらいなら代理でもいいでしょ? あ、でもアリーレさんとベタベタするのは禁止」
「しないって。でも一人で大丈夫か?」
「あなたは一人の力でアークメイジまで登り詰めた。なのになぜあたしが一人の力で戦士ギルドを登り詰められないって考えるの?」
「ん、わかった。盗賊と言っても油断はするなよ」
「わかってるわ」
 
 こうして俺は、緑娘ソニアと別れて、魔術師ギルドへと前回の仕事の報告へと向かった。
 この別れが最後の別れになるとは、この時は思いもしなかったのである。
 
 ――なんて語れば、なんかドラマチックな展開にならないか? ありがちな話だけどなw
 
  

「キャラヒルさん、これが緑娘――じゃなくてソニアの纏めたアイレイドのダムについての調査報告書です」
「ご苦労様。それじゃあお嬢さんの推薦状は出しておきますね。で、彼女はどこに?」
「別の仕事で忙しいみたいで、気にしないでください。あ、それよりも大事な話があります」
「何でしょう?」
「アイレイドのダムは割りと重要な施設のようです。そこで調査していた死霊術師は殲滅しておきましたが、山賊も狙っているみたいですし、ダムを管理する者、山賊を迎撃する者。その辺りの人選をして派遣しておくべきだと考えます」
「わかりました。バトルメイジのアリーレと相談して早急に決めておきます」
 
 そういうわけで、アンヴィルでの魔術師ギルドの仕事は完了した。
 ボタン一つで管理できるダム。報告書にもそう記録しているはずだから、俺じゃなくても管理できるだろう。
 セスタスは山賊でもコントロールされるかもしれないと言っていたからな。
 
 
 というわけで、再びレレスの店にて。
 
「夜まで時間があるからなぁ、俺はやることないよ」
「じゃあこうして。店の外で待機していて、もしもあたしが危なくなったら合言葉を言うから助けに駆けつけて」
「合言葉? なんだそりゃ? 助けてーっ! でいいじゃないか?」
「それだとあたしがかっこ悪い。えっとね、『ごめ~ん、昨日眠れなくて……、だから寝坊しちゃった、てへっ☆』という合言葉を言うから、それを聞いたら助けにきてね」
「そんな意味不明な合言葉でいいのか? ってかその合言葉の方がかっこわるいと思う」
「いいの! この『てへっ☆』が重要なの。それらしい偽の合言葉に騙されないでね」
「そんな微妙なニュアンスなんてわかるかよ。で、俺は何と答えたらいいのだ?」
「えっと、『ちっとも待って――』じゃなくて、聞こえたら店に駆け込んで助けてくれたらいいの」
「回りくどい召喚魔法だな」
「なによぉ、あたしがピンチの時にヒーローが現れてくれてもいいじゃないのよぉ。一度くらいは経験してみたくない?」
「わかったわかった」
 
 こうして俺は、店の外で待機して待つことにした。
 ヒーローか、一度くらいは経験か……。
 その時俺は、ダル=マの姿が脳裏に浮かび、ハックダートを包む影についての出来事を思い出していた。
 
「マイヒーロー……、か」
 
 しかしヒーローと賞賛されても、残念ながらアルゴニアンでは萌えない。
 緑娘ソニア、少々野望的なことで問題を抱えた娘だが、美人だし可愛いしクネクネだしムチムチだしおっぱいだし俺には素直だし。なんというか、俺には過ぎた婚約者だよな。
 まぁ彼女は戦闘能力は優れているから、余計な心配はしないけどね。
 俺が一人で対処できる困難ぐらいは、緑娘一人でも対処できるだろう。
 
 ………
 ……
 …
 
 深夜、日付が変わる頃――
 

 
「ん? 何だお前らは? レレスの店に何の用だ?」
「うるせぇな、気にするなよ。俺たちはここの従業員だぜ」
「そうか? 盗みが頻発しているみたいだから用心しとけよ。あと、深夜に盗賊がくるみたいだからな」
「てめぇの知ったことじゃねーよ」
 
 なんだか人相も言動も荒っぽい奴だが、従業員と名乗った三人組は、レレスの店に入っていった。
 うむ、緑娘を怪しんで口論にならなければいいが。
 
 ――と、しばらくすると店の中から人が暴れるような激しい音が響いてきた。
 ん? あの三人組が従業員の名を語った盗賊だったのか?
 うかつだった――、じゃない。俺が心配してどうする。こういった盗賊を退治するのが今回の戦士ギルドとしての任務だ。
 俺の助けが無ければそんな仕事すら片付けられないような奴が、ギルドの頂点を目指してみたいとかこの国を支配してみたいとか言うもんじゃない。
 俺は、緑娘ソニアの武運を祈って、いや、信じて、すぐにでも加勢してやりたい気持ちを抑えて待っていた。
 
 しかしその時――
 
「ごめ~ん、昨日眠れなくて……、だから寝坊しちゃった、てへっ☆」
 
 ――店の中から、冗談かと思っていたが決めた合言葉が聞こえてきた。
 俺は慌てて店の中へと駆け込んだ。
 

 
 …………(。-`ω´-)
 
「どう? てへっ☆が可愛かったでしょ?」
「可愛いとか不細工とかじゃなくて、こいつら従業員じゃなかったのか?」
「え~、でも物陰に隠れていたらなんか盗み始めたから飛び出してやっつけちゃった、てへっ☆」
「てへはいいから。うむ、さすがだね、すごいよ」
「今更見直した?」
「惚れたかもしれない」
「それも今更ね……」
「こほん、それじゃあ報告に行こうか。レレスは隣の宿屋で待っているはずだ」
 
 この時俺は、あんな合言葉は緊急時にとっさに言えるわけが無い。
 今更ながら、意味のない合言葉だったのだと気がついたりした。
 

 そういうわけで、盗賊は始末できたことをレレスに報告へと向かった。
 どうやら盗賊は、奴らの言っていたとおり全員レレスの店の元従業員だったようだ。
 そっかあいつら、嘘は言ってなかったんだな。
 レレスは言った、「朝の開店を任せるほど信用していたのに、なぜ犯罪に手を染めたのか」と。
 それはね、この国の物価がおかしいからなのだ。
 レレスが従業員にいくら給料を払っていたのか知らないが、装備が1000G以上、上質のダイヤモンドが100G、宿代一晩10G。この価値観が、この国をおかしくしているのだよ。
 数ゴールドのために物乞いをするとか。そんなの樽の中漁ればいくらでも出てくるよ。
 ああそうそう。今回押し入った三人の盗賊が装備していた緑色の防具。あれ高く売れるから全部剥ぎ取っておいたからね。
 
 というわけで、報酬として600Gを頂いた。
 まあまあよい方か? 俺にはもうこの国の貨幣の価値がわからなくなってきている。
 お金に困れば適当な洞窟にでも潜り込んで、山賊狩りをして装備を売る方が金になるからな。もう無茶苦茶だ。
 それでもそのおかげで、全ての街に自宅を持つことができるようになっているのだから、不平を言うわけではないけどね。
 
 
 後はアザーンに報告して、仕事は完了である。
 

「ねぇ! あたし見習いから修行者に昇進したよ。もう熟練者なんだって」
「おめでとう、がんばって修行してくれたまへ」
 
 そういえば、魔術師ギルドにも修行者ってのもあったな。
 俺はもうそこは通り過ぎたから修行なんてやらないけどな!
 
 
 
 
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