悩みの種はネズミ 後編 ~アンヴィルの警備問題~

 
「マウンテン・ライオンの退治はできてないじゃないの! まだ今も地下室に一匹居るわ! 殺してきて!」

 アンヴィル郊外でマウンテン・ライオンを退治してアルヴィーナ婆さんの所へ報告へと戻ったのだが、婆さんは報告を喜ぶどころか仕事が終わっていないと騒いできた。
 この家の地下室にはこんなにライオンが入り込んでくるのに、町は平穏そのもの。これは何か陰謀でも起きているのではないか?
 
 地下室へと再び向かってみると、確かにライオンが居るね。今度はネズミと喧嘩しているよ。

「え~? さっき退治したのにまた居る!」
「やっぱりあの穴を塞がないとダメだと思うけど、とりあえず退治しろよ」
「しょうがないわね!」
 

 また出たよ、ニードルヒールキック。
 今度はライオンの喉にグサリ。一撃でくたばらなければ、さらに踏みつけてくるから怖い怖い。
 
「ってかさ、そのニードルと大きな鎌を使い分けるのだな」
「いや、こっちは奥の手にしたいから、他の人が見ている前では鎌しか見せないようにすることにしたの。雪山の上にある塔で、あなたが奥の手を持つのもおもしろいと言ったから」
「そのニードルの方が絶対強いって」
「だから人にはめったに見せない奥の手よ」
 
 そんなわけで、再び地下室に現れたライオンを退治して婆さんに報告した。
 アルヴィーナ婆さんは、今度は近所のクウィル=ウィーヴが犯人だと言い出した。ライオン使いか?
 なにやら夜中に家の裏手でコソコソと何かをしていたらしい。
 見張っていて犯行現場を突き止めて欲しいそうだが……
 
「どうしよう?」
「いや、どうしようじゃなくて、君の仕事だから自分で考えようよ」
「その人の家に行って、問い詰めてみる」
「ん、そうしよう」
 
 クウィル=ウィーヴの家は、アルヴィーナ婆さんの家の隣のようだ。

「どうだ?」
「鍵がかかってる」
「留守か。まぁ犯行現場を突き止めなければならないから、たぶん話をしてもごまかされるだろうな」
「じゃああたしは隠れているからあなたが犯行現場を突き止めて」
「だから君の仕事だって」
「うん、あたしが囮になって注意を引き付けるから」
 
 そう言うと緑娘テフラは、大声で「戦士ギルドから派遣された者です! アルヴィーナ婆さんのネズミにおける調査をしています!」と叫びながら通りを歩き始めた。
 たしかにこれで、クウィル=ウィーヴの注意はこの緑娘に行くだろう。
 

「それじゃ、あたしはここでライオンが入ってこないか見張っているから、あなたは外から見張ってて」
「おかのした」
 

 というわけで、物陰に隠れて待機。これで内側と外側、両方から見張っていることになる。
 これだと戦士ギルドというより、探偵ギルドじゃないかね?
 
 ………
 ……
 …
 
 夕暮れ、そろそろ日没だという頃――

 む、誰かが婆さんの家の裏でコソコソしているぞ?
 こっそりと様子を伺うと、その人物は壁の穴の前に何かを置いた!
 突撃!
 

「こりゃ! そこへ置いた肉は一体何ぞ?!」
「何ですって? あなたは誰? 何のことだか分からないわ」
「いや、見た。俺が誰だというのはこの際問題でない。あなたがそこに肉を置くのを見た。それで何をするつもりだ?」
 
 問い詰めたところ、この人物――まだアルゴニアンを人物と呼ぶのには慣れないが、この人がクウィル=ウィーヴだということがわかった。
 またこの肉は、ネズミを外へ誘い出すためのもので、ネズミが外に出てくれば衛兵が駆除してくれると考えたそうだ。
 俺は、その肉が原因でマウンテン・ライオンが地下室に入り込んでいることを伝えてやった。そもそも街中にライオンが出る方がおかしいので、問題の根源は他にあるのだが……
 
「そんな! 私はただネズミを外に誘い出したかっただけ! ネズミ以外を傷つける気はなかったのよ。お願い、婆さんには何も言わないで!」
「全部聞いちゃったよ!」
「あわわ、戦士ギルドの人!」
 
 その時、地下室に通じている壁の内側から、緑娘の声が聞こえてきた。
 その声を聞くと、クウィル=ウィーヴはその場から逃げ出してしまった。
 

「ま、つまりそういうことだね」
「クウィル=ウィーヴはネズミを駆除したかっただけかぁ。どっちの気持ちも分かる、どう報告しようかな」
「根本的な問題は街中にライオンが入り込んでくることだから、それ以外は単なる近所の揉め事。戦士ギルドが介入することじゃないから、好きなように報告したらいいと思うぞ」
「わかったわ、壁の穴を塞ぐように忠告してくる」
 
 以上、ネズミに纏わる騒動はこれで幕を閉じた。
 全然戦士である必要のない仕事だった。せいぜい郊外へライオンを退治することぐらい。
 ライオンがネズミだけ狙うのも謎だし、そもそもライオンが入ってくることが問題。ネズミが襲われる問題は、壁の穴を塞げば解決する問題だ。
 町の中にライオンが入ってくる進入経路を調べないと、そのうち大きな事故が起きそうなきがするけど、まあいいか。俺は別にライオン怖くないし。
 アンヴィルの警備がガバガバなのだけが分かった一件でしたとさ、おしまい。
 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ