ブルーマギルド再建完了 ~記憶の断片~

 
 さて、ただの移動にいろいろあったなぁと思いながらもようやくブルーマ魔術師ギルドへと到着。
「たのもう!」と景気良く、場違いな挨拶をしつつギルド内へと入り込む。
 

「むっ、先輩、やっぱりギルドマスターになることにしたのですか?」
「いや、ジ=スカールはサブマスターに任命されてしまった。マスターのジュラーエルは現在食事中」
「そっか、サブマスターか。もうイタズラはできないな」
「そこが残念だが、ジ=スカールは諦めていない。この者は、いかなる相手でもイタズラをしなければならないのだ」
「諦めろよ……(。-`ω´-)」
「ところでそっちの娘は一体何だったんだ?」
「ん、婚約者――ということになっているみたい」
「なるほど……」
 
 なんか先輩は含むような視線を向けてきたが、とりあえずいろいろと見て回ってみた。

 錬金術師のルティエンさんは、可愛らしいエルフのお姉さんだ。
 元マスターのジーンヌとは、大学時代からの知り合いだということは、若作りしているが結構おばさんか……(。-`ω´-)
 いや、エルフだから若く見えるのか、まあいいや。
 あんまり見つめていると、隣からの視線が痛いので、次の人に会いに行く。
 

 ギョッ! オークの魔術師だ!
 オークの魔術師を見たことがないのか? と聞かれたので、正直初めてだと答えてやった。
 彼はレックグロという名前らしい。うん、レックグロ卿!
 どえもオークを見ると、卿付けで呼びたくなるのはマゾーガ卿の影響か?
 なにやら瞬間移動術師だそうで、魔術師ギルド限定で瞬間移動させてくれるらしい。便利だと思うが、片道移動だけなのだろうなぁ。
 他に、スペルメーカーのジュリアや、エンチャンターの、誰だっけが居たけど、全員が全員、俺を見て「アークメイジ様ごきげんよう」と言う。俺の顔もずいぶんと知れ渡ったものだなぁ。
 

「こんにちは、我が友よ」
 
 食堂で会ったジュラーエルは、俺のことを我が友と呼んでくれる。そこまで大したことはやっていないんだけどね!
 彼は新しい助手達が気に入っているようだ。自分のことを憎まないといいのだが、と心配しているが、ジ=スカールをサブマスターにするという人事の妙をやってのける人だ。きっと大丈夫だと思うよ。
 元々ジ=スカールは、何かと上にごまをするジーンヌが気に入らなくてイタズラをしていたのだ。そんな彼をサブマスターにすることで、不満を解消すると同時にイタズラの大義名分を奪う、やるねぇ。
 ただし、諦めていないようだが……

 
 
 さて、他に誰も居ない地下の物置。
 少し休んで……と思っていたら、幼馴染で婚約者の娘が誘いをかけてきたりする。
 
「ねぇ、アークメイジ様」

「な、なんだ突然」
「あなたってホント、このギルドだと有名人なのね」
「そりゃあアークメイジだからな。ところで聞くのをすっかり忘れていたんだけど、君の名は?」
「あたしの名前は……、やっぱりやめた。あなた知っているはずだから思い出してくれるまで名乗らない。今更自己紹介するの、なんだか悲しい」
「まいったな、それじゃあ何と呼べばいい?」
「やっぱり思い出せないの? じゃあ名前をつけてみて」
「う~ん、それじゃあ……、ソフィア?」
 俺がその名前を挙げると、一瞬彼女はハッと目を向けたが、すぐに口をへの字に曲げて否定してきた。
「その名前はダメ」
「そうか? う~ん、直感で閃いた名前なんだけどな」
「本当に記憶喪失なのね、その名前はあなたの――」
「俺の何?」
「なんでもな~い」
 そう言うと彼女は、ぷいと顔を背けてしまった。
 だがすぐにこちらへ向き直ると、「ねぇ、こっちに来てよ」などと言ってくる。

 たまにはこんなロマンスもいいだろう。なにしろ昔の俺は、ロマンチストだったみたいだからな。
 
「じゃあソフィリータとかはどう?」
「……はぁ。家族の名前だけは深層心理に残っているのね?」
「家族?」
「なんでもな~い」
 
 この娘の名前はいったい何なのか?
 俺は思い出そうとして、さらに娘の方へと顔を近づけて眺めてみた。彼女の吐息が顔にかかる。この感触は――
 
 その時、突然俺を強烈な頭痛が襲い掛かった!

「ぐおおっ、頭が割れそうだ!」
 

 俺は娘を投げ出すと、その場で頭を抱えてのたうちまわる。
 
「なっ、なに? どうしたのっ? いったい何が?!」
 
 娘も突然の出来事に慌てふためくだけだ。
 何だ? 過去の記憶にプロテクトがかかっているのか? それとも記憶が戻る兆候か……?
 
 ………
 ……
 …
 

 
 薄れ行く意識の中、頭の中に何らかのイメージが浮かび上がった――
 

 
 どこだかわからない……、しかし懐かしい気がする景色――
 ここはいったいどこなんだろう?
 

 
 …
 ……
 ………
 

「ちょっとラムリーザ、どうしちゃったの?」
「む、これはいかん。ラムリーザは意識を失ってしまっている」
「ちょっと何? ジなんとか先輩、いつの間にそこに居たの?!」
「ラムリーザと君の動向が気になって、透明化して後をつけていた。それと、ジ=ナントカではない、ジ=スカールだ」
「覗き?! 趣味悪い先輩ね! 誰か呼んできてよ!」
「ほいきた」
 
 なんか傍で誰かが騒いでいる。
 意識が戻った時、俺はうつぶせに倒れていて、部屋から出て行くジ=スカール先輩の後姿が見えたところだった。
 
 ………
 ……
 …

「アークメイジ、我が友よ。いったい何が起きたのだね?」
「ん、あ、いや何かトラブったみたい。でももう大丈夫、たぶん」
「疲れているのかもしれない、今日はゆっくりと休みたまえ」
「うん、そうする」
 
 ギルドに泊まってもいいけど、ブルーマでもせっかく自宅を構えたのだ。
 俺はギルドのメンバーに別れを告げて、自宅へと戻って行った。
 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ