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共闘 ~ニードルヒールの破壊力~

 
 さて、魚釣り――いや、魚捕まえに時間を取られたものの、ブルーマギルドへ向かって改めて出発した。
 帝都からは、全ての街へ向けた看板が立っていたりする。

「コロール、ブルーマ、シェイディンハル?」
「うん、ブルーマは雪国で景観はいまいち好きになれないけど、コロールやシェイディンハルの自然はいいぞ」
「今度連れて行って頂戴」
「機会があればね」
 

 そういうわけで、ユニコーンと出会う前ぶりに、徒歩でのシロディールめぐり。
 まぁユニコーンで駆け抜けるよりはいろいろと発見があって良いのかもしれない。ただし、ほとんどの街道は制覇したし、街道の方が森の中より猛獣が多いのが難点でもあるんだけどね。


「ああ、あそこか。あの砦にはやな奴が住み着いているんだよね」
「そうなの? だったらやっつけちゃえばいいじゃない」
「めんどくさいんだよな、衛兵も役に立っていないし」
 
 以前あの砦を通過するときに、モンスターに追いかけられたことがあった。確かシェイディンハルからコロールへ向かっていたときだ。
 あの時は逃げたので、まだ残っているはずである。

「ほら居た、スプリガンってやつ! こいつめんどくさいんだよなぁ」
「森の精ってところかしら。モンスターならさっさとやっつけちゃおうよ」
「こいつは猛獣を召喚するんだよ」
 
 そんなことを話している間にも、スプリガンは迫ってきて召喚魔法を唱えた。
 以前に見たこともある、黒熊を呼び寄せたのだった。
 
「あたしがスプリガンをやるわ、あなたは熊をやっつけて」
「さりげなく主役を奪おうとしているな?」
「あたしがこの物語の主人公さ」
「突然この世界に降って沸いてきた存在のくせに」
「お互い様でしょ?」
「やかましい、くらえ霊峰の指!」
 

 そんなこんな言いながらも、露払いに徹してあげる俺って優しい?


 あの娘はスプリガンを懐まで引き付けて――

 一気に蹴り上げてしまった。例の独特な針付き靴で。
 
 普通蹴りを放ったときの音を表現すると、ドカッ! とかバキッ! だよな?
 それが彼女の蹴りだと、ザリッ! とかグサッ! とか言うものだから恐ろしい。
 オーデンスの時は突く様に蹴ったのでグサッ、今回は下から蹴り上げたのでザリッとかいってんの。
 スプリガンは、胸から上にかけて斬撃を食らったようなもので、樹液のようなものを吹き上げながら崩れ落ちた。

「なんかすっごいな、その靴と言うか武器と言うか……」
「ニードルヒールって名前をつけたのよ。――ってあなたも知っているはずよ」
「針の踵か、確かにそのとおりの名前だね。しかしまぁ、なんでそんな特殊な武器に目覚めたのか」
「あなたが剣やハンマーを振り回す女を見たくないって言ったからでしょ? だからあたし、いろいろ考えたんじゃないのよ」
「えっ、俺が? まあでもここの国では誰もそんな武器使ってないからなぁ」
「故郷でもあたししか使ってないわ」
 

 別に疲れたわけでもないが、少し休憩。
 この砦はエンパイア砦というらしい。吸血鬼が住み着いていたら退治しよう。どうやら俺は吸血鬼に恨まれているみたいだからな。
 
「しかしあれだね、あんなに足が上がるなんて身体柔らかいね。でもなんでそんなに格闘術鍛えたんだ?」
「あなたと一緒に――ってそれはいいか、思い出してくれてからでもいいし。そんな質問が出てくること事態が嫌」
「ああ、ごろん。なんとか思い出して見るよ。それよりもそれすごいね、ちょっと俺にも使わせてみて」
「いいけど、慣れないと歩けないよ」
 
 俺は娘からニードルヒールと名づけられている独特な形をした靴を借りると身に付けて見た。
 そして一歩進みだそうとして――

 
 …………(。-`ω´-)
 
「こんな靴、歩けねーよ!」
「いきなり無理よ。あたしは慣れるために最初は短くて太い物から始めたわ。でも太いと刺さらないし、短いと刺さっても深く刺さらないからダメージは少ないでしょ?」
「確かに短刀と長剣の威力に置き換えたらそうだし、木の棒で突くよりもレイピアで突くほうが威力は高いよな」
「それで、普通に移動できる限界の細さと長さを追求していって、今こんな感じ。でもたぶんこれ以上は無理かも。細すぎると立った時に足が左右にぶれたり踏み出した時に横にひねったりするし、長すぎるとさすがに歩けなくなるし」
「つま先に針をつけて前蹴りする方が楽じゃないか?」
「最初はそっちも作ってみたけど、ダメ。靴の前に突起が出ていると、すぐに躓いて非常に歩きにくくなるの」
「しかしそんなに細くてよく折れないな。相手に刺さった地点で脱げたりしそうなものだが」
「そのためにストラップで固定しているし、踵の針の中にはミスリルの芯が通ってあるのよ。さらに針が剥がれないように心から靴底にかけてもミスリルの板が繋がっているから」
「重くないのか?」
「ミスリルは軽いのよ、忘れたの?」
「あ、そうだったね」
 

「こっちに針を突き出すな、危ない」 
「ちょっとこれ、綺麗にしてくれない? 踵にさっきの奴の樹液がついてドロッとしていて気持ち悪い」
「さっき釣りをした水辺に行って洗ってきたらいいじゃないか」
「やーん、なにこのドロドロ……」
 
 娘は指で靴についた樹液を少し触ってから、顔をしかめて指を振って落とそうとしていた。
 結局その辺りに生えている木の葉を使って拭い取ることにしたようだ。

「これからどうするの?」
「ちとこの砦を調べてみる。吸血鬼が住んでいたら殲滅して、それ以外だったら無視してブルーマへ向かう」
「吸血鬼、嫌いなの?」
「なんか知らんが、吸血鬼の方が俺を嫌っているらしい」
 
 俺は、以前帝都で起きた吸血鬼騒ぎのことを娘に聞かせてあげた。
 吸血鬼のセリデュールが、帝都の吸血鬼ハンター一団をつぶそうとしていたり、何故か俺を排除するために陰謀を張り巡らせたりしたことを。
 
「あなたを恨むような人は、あたしの敵でもあるね。いいわ、吸血鬼ハンターにあたしも加わる」
「今度ローランドに話してみるよ。俺は名誉団員だから話は聞いてくれるだろう」
 
 アークメイジだが魔術師ギルドでは融通は利かなかったが、吸血鬼ハンターみたいな小規模グループなら歓迎してくれるだろう。
 そんなわけで、エンパイア砦に入っていくことにした。
 吸血鬼が俺の敵になるというのなら、絶滅させてやろうじゃないか。
 そもそも吸血鬼ハンターの一団も、吸血鬼の殲滅は俺に丸投げしているみたいだしな。あいつら部屋で本ばかり読んでいて動こうとしねぇ……
 
 
 
 
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