第二十一話 ~ハーシーンのトーテム 制御できない血の力~
「ちょっと、意味も無く野獣化しないでもらえないかしら?」
翌朝、男はアエラの言葉に起こされることになった。
起き上がり、自分の手を見て驚いた。
ウェアウルフ化している?!
何が何だかわからないが、どうやら寝ている間に無意識のうちに野獣化してしまったのだろう。
獣の血が強くなってきているのだろうか……
………
……
…
アエラの話では、妖魔の洞窟に新たなトーテムがあることがわかったらしい。
妖魔の洞窟は、モーサルの南西に位置する洞窟である。
洞窟の中からは水が流れてきていて、その流れは滝となり眼下に広がる川に流れ込んでいる。
水源にでもなっているのだろう。
洞窟の中にはトロールが数匹居た!
さあ、狩りの時間だ!
男は意図せずともウェアウルフ化していた!
最近では、少しでも気分が高揚するとウェアウルフ化するようになっていたのだ。
まるで魂をハーシーンに操られているかのように……
トロールに立ち向かう。
トロールは肉体の回復力が高く、多少の傷はすぐに癒えてしまうのだ。
だがウェアウルフの戦闘能力は抜群である。
回復させる暇も与えずに、つぎつぎにトロールを叩きのめして行く。
あと一匹!
最近は常にウェアウルフ化して戦っているので、非常に楽だ。
しかしこの状態はどういうことなのだ? と男は考えた。
『獣の血の力を増幅――』
男は、ハーシーンの言ったこの意味がなんとなくわかった気がしてきた。
しかしどうすればいいのだ?
このままウェアウルフの血に飲み込まれてしまうのか?
ハーシーンに指輪を返すべきなのか?
………
……
…
トーテムは、この洞窟の宝箱に隠されていた。
トーテムは太鼓の形をしたものであり、何かの儀式にでも使いそうな物だ。
トーテムはアンダーフォージに持ち帰り、新たな力を得ることができるようになったのだ。