第十八話 ~ハーシーンに気に入られし者~
男は夜の森を彷徨っていた。
ウェアウルフの血のためか、夜が心地いい。
同胞団の仕事の報告もまだなので、このまま一旦アエラの所に戻っておこうか、とか考えていた。
………
……
…
気がつくと、目の前に青白く輝く獣が姿を現していた。
なんだこいつは? と男はあっけに取られていた所、唐突に頭の中に声が響いてきた。
「狩人よ、良い所で出会った。いつでも戦える力が欲しいか?」
響いてきた声は、男を試すようでもあり、誘っているようでもあった。
「力とは何だ?」
男はかすれるような声で聞き返した。
「栄光の追跡者がハーシーンと口にすれば、その視線に狩りの化身が宿る」
デイドラのハーシーンだ……
ウェアウルフ化という物は、そもそもハーシーンによって作られたものだと聞く。
そしてウェアウルフが死ぬと、その魂はハーシーンの領域であるハンティンググラウンドに行き、
そこで永遠の狩りを楽しむことになると言われている。
「この指輪を与えよう。獣の血の力を増幅することができる」
そう言い残すと、ハーシーンの姿は消えていた。
気がつけば、男の手に一つの指輪が握られていた。
ハーシーンが与えてくれた指輪。
これを使えばいつでもウェアウルフ化できるそうだ。
ハーシーンの指輪があれば変身はコントロールできると言われている。
これで昼間でも存分に戦えると考えた。
この時は、こう思ったものだ。
唐突だが、いいものをもらったと……
さっそくその指輪をはめてみる。
すると突如として沸き起こる狩猟衝動。
男はウェアウルフ化していた。
その夜は、思うがままに森の中を駆け巡ったのであった。