第六話 ~仕事・害獣駆除~
翌朝――
男は、次の雑用は何か? と考えながら寝床から身を起こした。
「いや、もう一員としてみとめてくれたのだったな……」
それなら模擬戦闘でもやりたいものだ。
――などと考えながらジョルバスクルの広間に向かった。
今日も誰かが模擬戦闘やっているようだ。
とくにやることもなく、ぼんやりと戦闘を眺めていると、アエラが話しかけてきた。
「昨夜はよく眠れたかしら?」
「ああ、寝床で寝るのは久しぶりだったからな」
「あなたは見た目より強いって聞いたわ。いつか一緒に狩りに行けるかも知れないわね」
「光栄なことだな」
そういう男に対して、アエラは仕事を持ち込んできた。
イーストマーチ、スカイリム東部の市民が助けを求めているようだ。
ミックスウォーター工場に、肉食獣が潜り込んだらしいのだ。
そこで誰かがケダモノを追い出さなければならないというのだ。
「仕事を受けよう」
男は待ってましたとばかりに引き受けた。
「見事ね。思ったとおり、頼りになるわ」
害獣駆除――
スカイリムにはいろいろな獰猛な生き物が生息している。
それらから市民を守るのも、戦士の務めである。
………
……
…
ここが依頼のあった町、ミックスウォーター工場。
材木切り出しの工場のあるたげの小さな村だ。
この中の家の一つに、サーベルキャットが入り込んだというのだ。
家と言っても小さな村だ、数えるほどしかない。
男は、とりあえず村人に話を聞くことにした。
「この村にサーベルキャットが潜り込んだとの依頼を受けたのだが?」
「あなたが同胞団の方ですね?」
戦士がやってきてくれたことで、村人も多少は安堵の表情を浮かべる。
「あの家でございます、戦士様……」
男はその家の方に意識を集中した。
確かに何者かの気配を察する。
…………
依頼のあった家はここに間違いない。
彼は、この中にサーベルキャットが入りこんでいると確信した。
剣に手をかけつつ、意を決して中に飛び込む。
居た! サーベルキャットだ!
サーベルキャットは突然あらわれた男の姿に、一瞬驚いたようだが、すぐに敵意をむき出しにして襲いかかってきた。
男は素早くベッドの上に飛び乗る。
こういった獣相手に戦うときは、高台に陣取った方が有利なのだ。
基本的に獣は上から飛びかかってくる。
もしも、のしかかられたりでもすれじ一巻の終わりだ。
まずは邪魔な布団をサーベルキャットに投げつける。
怒り狂ったサーベルキャットは布団に噛みつき、その鋭い爪でズタズタにしようとする。
だがそれはあくまで陽動作戦だ。
サーベルキャットが布団と格闘している隙をついて、その脳天に一撃を叩きこんだ。
決定打とはならなかったが、頭が割れたサーベルキャットの動きはいくらか鈍くなったようだ。
布団を投げ捨て、再び男に襲いかかってくる。
男はその鋭い爪を剣でうまくいなしつつ、隙を窺っていた。
だが、鈍くなったとはいえサーベルキャットの動きは俊敏であり、なかなか次の決定打を叩きこむことができないでいた。
時々ベッドの上に上ってこようとするところを切り払うのが精いっぱいだ。
「まずいな……」
互角に戦っているようで、実際は防戦一方だ。
ベッドとの段差がサーベルキャットの突進を防いでくれているのがせめてもの救いだ。
だが、このままではいずれスタミナが切れ……
男は昨日のジャイアントとの戦いを思い出していた。
あの時は運よく救援が入ったが……
同じ失敗をしないよう、チラリと足元を確認する。
ベッドの上には障害物は無い。
ただ――
「賭けに出るか……」
このままでは埒が明かないと考えた男は、最後の賭けに出ることにした。
足元に転がっていた枕を、サーベルキャットの顔面めがけて蹴飛ばしたのだ。
枕は見事に命中し、高く跳ね上がった。
サーベルキャットは男の事を一瞬忘れ、宙を舞う枕めがけて飛びかかって行った。
その時、男に対して無防備に喉と腹を晒しだすこととなったのだ!
そして男は、その一瞬の隙を見逃すことは無かった!
~ Mission Complete ~
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